2020 Fiscal Year Annual Research Report
既存装置を活用した散乱電子差分像による新規有機材料評価法の開発
Project/Area Number |
20H00960
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
秋本 由佳 東京工業大学, 技術部, 技術職員
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Project Period (FY) |
2020-04-01 –
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Keywords | 電子顕微鏡 / 散乱電子 / DPC |
Outline of Annual Research Achievements |
市販の走査電子顕微鏡(SEM)に付属する四分割型の走査透過電子顕微鏡(STEM)検出器を活用して、散乱電子の差分信号を利用して無染色で有機材料の膜厚の違いや凹凸情報を評価するという新たな手法「散乱電子差分法」の開発を目的とした。報告者はこれまでに「微分位相コントラスト(DPC)法」を低加速電圧で使用するSEMに応用し、無染色で有機材料を評価する新しい手法「SEMベース低加速DPC法」の可視化に成功しているが、市販装置の光学系では、検出器上に均等に透過電子を入れることができず、収差による像ボケが生じる問題が明らかとなった。そこで本研究では、このDPC法の基本原理である「透過電子」の代わりに「散乱電子」を用いて、DPC法と同様に差分信号により像形成を行うことを試みた。 方法は、全方向に位相変化のあるポリスチレンラテックス粒子および膜厚に位相変化のあるマイクログリッドを使用し、条件検討を行った。主な項目は、像形成の要因となる加速電圧、検出角、絞りサイズ、収束角、検出器極性の組み合わせ、電流強度、ビーム位置、フォーカス位置の条件について検討した。 各種条件を検討した結果、DPC像と同様にフォーカス位置を変えるとエッジのコントラストが白黒反転する明瞭な散乱電子差分像を得ることができた。DPC法では収差による像ボケが問題となったが、本手法では、散乱電子を用いることで軸調整が容易となり、さらに分解能を犠牲にせず像質を改良することができた。よって、散乱電子差分法は、低加速電圧における電子顕微鏡観察法であるため、より大きな位相変化量によるコントラストが付きやすくなるだけでなく、電子線照射による試料ダメージを抑制できるメリットもあることから、無染色での有機材料の評価法として期待できるものと思われる。
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