2020 Fiscal Year Annual Research Report
接ぎ木技術を活用した耐塩性を持つマツ材線虫病抵抗性アカマツの創出
Project/Area Number |
20H00979
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
米道 学 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 技術専門職員
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Project Period (FY) |
2020-04-01 –
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Keywords | 海水 / Fv/Fm / Naイオン |
Outline of Annual Research Achievements |
沿岸域では潮風や高潮,飛砂などの自然災害の防止機能として,マツを主とした海岸林が造成されてきたが,東日本大震災による津波により東北~関東地方の海岸林は甚大な被害を受けた。クロマツは他の広葉樹と比べて耐塩性が高く,海岸林復元には不可欠な樹種である。一方,1970年代から顕著になったマツ材線虫病によって我が国のマツ林は壊滅的な被害を受けている。対策として,激害林分の残存木から抵抗性のあるクローンの選抜育種が行われたが,クロマツにおける選抜育種は困難で,アカマツの方がクロマツよりもマツ材線虫病抵抗性が強い樹種であることが明らかになっている。アカマツと同程度の抵抗性を有すクロマツ系統はほぼなく,クロマツにおける選抜は困難である。一方,アカマツの方がクロマツよりも津波による被害は大きかった。苗木を用いて海水の浸漬を行い,耐塩性を評価した結果では,アカマツはクロマツよりも耐塩性が低いとされる。これは,クロマツが根から針葉へのナトリウムの移動を抑える機構を有するためである可能性が指摘されている。以上から我が国には,マツ材線虫病抵抗性と耐塩性の両方を併せ持つ樹種はないといってよい。 植物のクローン増殖方法の1つとして接ぎ木があるが,この技術を用いると穂木と台木で由来が異なるものを癒着させた個体を作出が可能である。マツ材線虫病抵抗性の穂木を未選抜の台木に接いでも,穂木の抵抗性には影響を及ぼさないことが知られている。 そこで本研究では,マツ材線虫病抵抗性を持つアカマツを穂木とし,耐塩性を持つクロマツを台木の組合せで接ぎ木苗を作成し耐塩性試験を行った。その結果,台木クロマツにすることで穂木アカマツの耐塩性が強くなる可能性が考えられた。
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