Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Scientists
神奈川県内の河川及び浴槽内を調査地として、珪藻に依らない溺死判定法及び溺死場所の推定法の開発を試みた。鶏肉または豚肉を用いた溺水モデルを作製し、河川または浴槽に沈めてモデル内の水を採取した。また調査地点の環境水を採取し底生生物を採集した。環境水からミクロキスティス属の藍藻が観察された。底生生物の群集組成の非類似度を算出し、視覚化したところ地域差が認められた。河川水と浴槽水を無脊椎動物のmtCOⅠ遺伝子の約700 bpのバンドの有無で区別できることが示唆された。ヒト水死体の溺水から mtCOⅠ遺伝子を増幅し、その配列を調べ水生無脊椎動物の配列と比較対照することで溺水場所を推定できる可能性がある。
法医学、魚病学、生態学
法医学において、水死体の溺水の証明には珪藻を主とするプランクトンが肺及び消化器系の臓器から検出されることが重要視されてきた。一方でプランクトンは溺水以外の要因でヒト体内に侵入し得るとして、溺水の判定のための指標としての価値に疑義をもつ考えもある。そこで珪藻以外の生物を溺水の判定に利用できるかを検討した。溺水の判定のための珪藻以外の生物指標として、多様な水生昆虫類をはじめとした無脊椎動物を利用できる可能性が示唆された。また、更なる検証を要するが、溺水から水生無脊椎動物由来のDNAを検出することで、屋内外で溺水死したのか否か、また河川のどの場所で溺水死したのかを明らかにできる可能性がある。