2020 Fiscal Year Annual Research Report
アプレピタントとその代謝物の血漿タンパク結合率に着目した制吐効果の個人差解明
Project/Area Number |
20H01018
|
Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
鈴木 祐介 浜松医科大学, 医学部附属病院, 薬剤師
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 –
|
Keywords | アプレピタント / CINV / 血中濃度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、アプレピタント及び代謝物の血漿中遊離型濃度の測定法を確立し、アプレピタント内服患者における血漿中総濃度及び遊離型濃度を測定することで、制吐作用との関係性を明らかにし、アプレピタントの臨床効果の予測に役立てることを目的とした。 遊離型濃度の測定にあたり、LC-MS/MSを用いた測定法を確立した。検体には、遠心フィルターにより限外ろ過した血漿を用い、その他の処理は総濃度の測定と同様に行った。バリデーションの結果は米国FDAのガイドラインの基準を満たした。 次に、確立された測定法を用いて患者検体の測定を行った。対象患者は書面により同意の得られた、当院においてシスプラチンベースの化学療法を施行し、アプレピタントを内服する日本人頭頸部がん患者53名とした。アプレピタント最終内服から24時間後のday4の朝に採血を行い、アプレピタント及びND-APの総濃度及び遊離型濃度を測定した。 続いて、アンケートを用いて化学療法誘発の悪心・嘔吐の有無の確認を行った。観察したday1-7のうち一度でも悪心の生じた患者は53名中31名であり、58%の患者で化学療法誘発の悪心が生じていた。また急性期(抗がん剤投与後24時間以内)と遅発期(24時間以降)に悪心が生じた患者はそれぞれ3名と30名であり、遅発期の悪心は24-72時間に多く発生する傾向にあった。また観察期間中に嘔吐した患者はいなかった。遅発性嘔気の有無で患者を分類した場合に、血中総及び遊離型アプレピタント濃度と総ND-AP濃度に差は認められなかった。しかし、遊離型ND-APにおいて、遅発性嘔気を生じた患者群よりも、生じなかった患者群で有意に高い血中濃度を確認した。以上のことから、アプレピタントによる制吐効果には、血中の遊離型ND-AP濃度が関係していることが示唆された。
|