2020 Fiscal Year Annual Research Report
抗薬物抗体に着目したバイオマーカー探索に有用な血中トシリズマブ濃度測定法の検討
Project/Area Number |
20H01019
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
望月 啓志 浜松医科大学, 医学部附属病院, 薬剤師
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Project Period (FY) |
2020-04-01 –
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Keywords | 抗薬物抗体 / LC-MS/MS / ELISA |
Outline of Annual Research Achievements |
抗IL-6受容体抗体のトシリズマブ(TCZ)の治療効果を十分に得られない関節リウマチ(RA)患者が一定数存在する。その原因として血中濃度不足が考えられており、血中TCZ濃度は治療効果のバイオマーカーとなり得る。抗体医薬の定量に通常用いられるELISA法だが、抗薬物抗体(ADA)により測定結果が偽低値を示すことが報告されている。一方、LC-MS/MS法はタンパク質間の相互作用に依存しない方法のため、ADAによる影響を受けないと予想される。本研究ではELISA法及びLC-MS/MS法によるTCZ定量へのADAの影響を解明し、ADA存在下でも血中TCZ濃度を正確に評価できる測定法を提示する。 RAに対してTCZを静脈内投与(8名)又は皮下投与(14名)された患者を対象とした。TCZ、ADAは市販のELISAキットを用いて測定し、TCZは本研究室で確立したLC-MS/MS法でも測定した。両測定法で得られた血中TCZ濃度を比較し、測定値に差が生じるか、またADA陽性と陰性の間でその差に違いが見られるか確認した。 両測定法による血中TCZ濃度は良好に相関した(r=0.82)が、Bland-Altman plotより系統誤差が確認され、LC-MS/MS法の測定値はELISA法に比べ高値を示した(平均バイアス69.8%、95%信頼区間47.9-91.7%)。 またADAの陽性率は77.3%であり、ADA陽性と陰性の間で両測定法の測定値の差を比較したところ、有意差は見られなかった。従って、両測定法の測定値に差が生じる要因はADAではないことが示唆され、正確に血中TCZ濃度を評価できる測定法の提示はできなかった。従来の報告と比べるとADA陽性率がかなり高い値であった。トラフ値以外の検体も含まれているため交差反応によるADA偽陽性の可能性が考えられ、引き続きトラフ値検体を収集し検討を重ねる必要がある。
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