2020 Fiscal Year Annual Research Report
卵管分泌糖タンパク質OVGP1による着床後胚の成長制御に関する組織化学的解析
Project/Area Number |
20H01113
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
黒澤 大 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 私大技術員
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 卵管分泌糖タンパク質OVGP1 / ゲノム編集ハムスター / 不妊 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類の卵管は受精・初期発生に重要な器官である。卵子はその管腔内において受精し、胚盤胞まで分化したのち、子宮に着床する。卵管内腔を満たす卵管液には様々な液性因子が存在するが、それらの生理機能の多くは未だ不明である。 我々は、これら因子のうち卵管から分泌され配偶子を修飾する糖タンパク質遺伝子Ovgp1欠損(KO)ハムスターをゲノム編集により作成した。このモデル動物は妊娠しても正常な発育が阻害され不妊になることをこれまで明らかにした。 本研究では、まず妊娠後の個体発生停止時期を形態学的に明らかにすることを試みた。雌KO、もしくはコントロールとして雌野生型(wt)を雄wt個体と同居させ、翌朝、膣内精子が確認できた日の正午を0.5 day-post-coitum (dpc)と定義した。これらの個体を用い、着床後の5.5および8.5 dpcの子宮をまず目視下に観察した。観察に先立ち着床部位を明確にするために1% シカゴブルー溶液 400 μLを麻酔下で心臓内に投与した。その結果、平均着床数は5.5 dpcではKO; 3.6 ± 3.0 (n = 8)、wt; 13.2 ± 1.8 (n = 10)、8.5 dpcではKO; 3.3 ± 2.5 (n = 4)、wt; 15.3 ± 3.8 (n = 4)、と両ステージともにKO個体では大幅な着床数の低下がみられた。更に雌KOの8.5 dpc (n = 4)において、光学顕微鏡を用いて着床部位を観察したところ、4例中1例で着床胚の発育は認められたものの、胎芽の痕跡は確認できなかった。このことから、妊娠KO個体では8.5 dpcまでには胚性致死となることが推定される。 今後は、この雌KO個体を用いて初期発生異常に関わる更なる分子を質量分析法により探索し、それら分子の生殖器官での発現分布を組織化学的に解析する予定である。
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