2020 Fiscal Year Annual Research Report
フルオロフェニル基を有するカチノン類薬物に対する新規位置異性体識別法の開発
Project/Area Number |
20H01134
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Research Institution | 佐賀県警察本部刑事部科学捜査研究所 |
Principal Investigator |
内川 貴志 佐賀県警察本部刑事部科学捜査研究所, 警察職員
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Project Period (FY) |
2020-04-01 –
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Keywords | フルオロフェニル基 / 位置異性体識別 / GC-IR |
Outline of Annual Research Achievements |
〇研究目的:フルオロフェニル基(F-Ph基)を有する違法薬物は多数存在しているが、そのオルト、メタ、パラの各位置異性体の識別は、質量分析等の一般的な検査では非常に困難であることが知られている。本研究では、F-Ph基を有するカチノン類薬物をガスクロマトグラフ赤外分光度計(GC-IR)を用いて分析し、得られた赤外吸収スペクトル上に出現する位置異性体由来の特徴を詳細に解析することで、有効な異性体識別法を開発することを試みた。 〇研究方法:昨年度の科研費奨励研究成果と分子構造計算による解析で、F-Ph基に由来する赤外吸収スペクトルが、1500cm-1付近と1600cm-1付近に出現することが判明している。その吸収スペクトルには、薬物の位置異性体の情報が含まれていることから、オルト、メタ、パラの3種類の異性体が揃ったカチノン類薬物を複数入手し、その分析においてこの2か所の吸収スペクトルに着目し、位置異性体による波数変化を検証した。また、カチノン類薬物は熱分解を起こすことがあるため、これを極力抑える目的でオンカラム注入法を採用し、更に熱安定性が増すアセチル誘導体化も実施して検討を行った。 〇研究成果:複数のF-Ph基を有するカチノン類薬物を測定した結果、1500cm-1付近と1600cm-1付近の2か所に出現する吸収スペクトルは、それぞれ各位置異性体ごとにほぼ同一波数に集約された。この2か所に見られる特徴を総合的に判断すると、3種類の位置異性体を確実に識別することが可能であった。また今回の分析データで多変量解析を実施したところ、各異性体ごとに有意に離れた3つのグループに分けられた。よって、F-Ph基を有するカチノン類薬物は、赤外吸収スペクトル上の1500cm-1付近と1600cm-1付近の吸収スペクトルに着目することで、容易に異性体識別が可能であることが判明した。
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