2020 Fiscal Year Annual Research Report
脳卒中後の下肢の運動障害に対する磁気刺激を用いた新たな治療法の開発
Project/Area Number |
20H01140
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Research Institution | Ibaraki Prefectural University of Health Science |
Principal Investigator |
石橋 清成 茨城県立医療大学, 公私立大学の部局等, 理学療法士
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Project Period (FY) |
2020-04-01 –
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Keywords | 磁気刺激 / 筋シナジー解析 / 脳卒中 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】 脳卒中後に生じる下肢の運動麻痺は、歩行障害を引き起こし、介護負担の増大や患者の人生の質(QOL)の著しい低下を来す。脳卒中後の運動麻痺に対し、電気刺激による末梢からの感覚入力が運動麻痺の改善に関わる神経活動を修飾し、麻痺の改善を図る取り組みが行われている。しかし、電気刺激は皮膚上に設置した電極を介して末梢神経を刺激するため、痛みを伴い易く、刺激範囲も表層の神経組織に限定される技術的問題点があった。本研究は、痛みがなく深部の神経組織の刺激が可能な磁気刺激を末梢神経刺激として応用し、脳卒中患者の下肢の運動麻痺や歩行障害を改善させるかを検証することを目的とした。 【研究方法】 当院に入院した慢性期脳卒中患者1例を対象とした。麻痺側の前脛骨筋に対し、磁気刺激を10分間、計2セット実施し、その前後で①麻痺側の足関節背屈運動、②麻痺側の下腿三頭筋の痙縮、③歩行能力(10 m歩行テスト)の変化を評価した。また、麻痺側の大臀筋、大腿直筋(近位部と遠位部)、大腿二頭筋、前脛骨筋、腓腹筋の6箇所より筋電図を記録し、磁気刺激による歩行中の筋活動変化を筋シナジー解析にて検討した。 【研究成果】 磁気刺激は痛みの誘発なく実施され、有害事象はなかった。①麻痺側の足関節背屈運動は、磁気刺激後に促通され、拮抗筋である腓腹筋の筋活動の減少を伴いつつ、前脛骨筋の筋活動の増大を認めた。しかし、②麻痺側の下腿三頭筋の痙縮や③歩行能力については、磁気刺激前後で大きな変化は認めなかった。また、筋シナジー解析の結果についても、著名な変化は認めなかった。これらより、単回の磁気刺激は脳卒中後の下肢の運動麻痺を改善させるが、その効果は限定的であり、歩行障害の改善には反復した介入や他の介入との併用など、新たな介入方法の検討が必要であることが示唆された。
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