2022 Fiscal Year Annual Research Report
Meaning of Life and the Metaphysics of Death: the Possibilities of Analytic Existentialism and a Critical Examination of it
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20H01175
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藏田 伸雄 北海道大学, 文学研究院, 教授 (50303714)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森岡 正博 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (80192780)
村山 達也 東北大学, 文学研究科, 教授 (50596161)
久木田 水生 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (10648869)
古田 徹也 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (00710394)
八重樫 徹 広島工業大学, 工学部, 准教授 (20748884)
鈴木 生郎 日本大学, 文理学部, 准教授 (40771473)
杉本 俊介 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 准教授 (80755819)
吉沢 文武 一橋大学, 大学院社会学研究科, 講師 (20769715)
長門 裕介 大阪大学, 社会技術共創研究センター, 特任助教(常勤) (10907976)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 人生の意味 / 宇宙的無意味さ / 反出生主義 / 幸福 / 疎外 / 主観説と客観説 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度から2022年度に繰り越した予算による研究成果としては、人生の意味についてのメタ倫理学的な検討がある。この成果の一部は日本倫理学会(2022年10月1日、東京、慶應義塾大学)において藏田が「「人生の意味」についての判断とその責任」というタイトルで発表した。「人生の意味」に関する議論はメタ倫理学における表出主義に関する議論と接続することが可能である。この問題についてはD.ウィギンズの「真理・発明・人生の意味」などの古典的な研究があり、「認知的未確定性」と「主張可能性」を用いた分析がなされているが、その後、この方面での議論は十分に展開されていない。またスキャンロンの判断感受性態度のアイディアを用いたメッツによる検討があるが、これについてもメッツ自身は十分に展開していない。2022年度は藏田が他の研究分担者の協力も得ながら、この問題について判断感受性態度と判断動機内在主義を結び付けるという形で一定の見通しを得ることができた。 またR4年度の夏から本研究の成果となる『人生の意味の哲学入門』(春秋社)の執筆及び編集を始めた。本研究の鍵となる「人生の意味」の多義的な意味についての分析を進め、「主観説と客観説」「宇宙的無意味さ」「疎外」「自己実現」「幸福」「反出生主義」といった、この分野での主要なトピックについて分析を進めた。また人生の意味に関する判断について真理条件を想定することの問題点や、この分野の代表的な研究者であるウィトゲンシュタインについての研究を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2022年度には計7回のオンライン研究会を開催し、各研究分担者が研究成果をもとに執筆した原稿を相互に検討したが、その過程でこの分野の研究の全体像がさらに明らかになり、また個々の問題についての連関もさらに明らかにすることができた。 これまでの研究を通じて、「人生の意味」に関連するいくつかの問題圏(自由意志、反出生主義、ペシミズム、仕事の意味、疎外、自己、不安、欲求等)に関する議論の全体像を明らかにすることができた。また既存の「人生の意味」に関する議論の多くは、男性健常者の視点からなされているため、フェミニズムや障害論、差別論といった観点から、この研究分野の主流の議論の構造自体を問いなおす必要がある。本年度は研究分担者の杉本が主導した日本倫理学会での主題別討議の内容をもとに、本問題と生殖や差別との関連について検討するための視座を得ることができた。 特に藏田は「人生の意味」に関する判断についての表出主義と責任について、メタ倫理学的な手法を用いて検討を行ったが、これによって「人生の意味」に関する議論における「価値」の位置づけを明確化することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
R5年(2022年)度も研究分担者と研究協力者によるオンライン研究会を定期的に開催し研究を進めた。2022年度は前年度までの研究の成果をもとに、本研究の研究分担者と研究協力者による入門書『人生の意味の哲学入門』の作成を始めた。特に本書の作成過程で、英語圏での「人生の意味の哲学」をメタ的に検討し、英語圏での「人生の意味」の哲学の性格について批判的に検討する必要性が認識された。特に「人生の意味の哲学」について2022年にOxford University Pressから刊行されたOxford Hanbook of Meananig in Lifeはこの分野の論者を網羅的にカバーしているが、『人生の意味の哲学入門』と重なる部分と重ならない部分がある。なぜそのようなことになるのかを検討する必要があるので、次年度はそのような作業を進める。さらに「人生の意味の哲学」と反出生主義とは重なる部分もあるが異なる部分もあり、それについての検討が次年度の課題の一つとなる。
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