2020 Fiscal Year Annual Research Report
唱導の場から見た日本古代中世文学の特質についての総合的研究
Project/Area Number |
20H01235
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
牧野 淳司 明治大学, 文学部, 専任教授 (10453961)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 美香 名古屋大学, 人文学研究科, 共同研究員 (10449093)
猪瀬 千尋 名古屋大学, 高等研究院(文), 特任助教 (10723653)
高橋 悠介 慶應義塾大学, 斯道文庫(三田), 准教授 (40551502)
貫井 裕恵 神奈川県立金沢文庫, 学芸課, 学芸員 (40782868)
落合 博志 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (50224259)
齋藤 真麻理 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (50280532)
恋田 知子 慶應義塾大学, 文学部(三田), 准教授 (50516995)
柴 佳世乃 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (60235562)
小島 裕子 鶴見大学, 仏教文化研究所, 特任研究員 (70649780)
海野 圭介 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (80346155)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 唱導 / 古代文学 / 中世文学 / 法会 / 寺院資料 / 説草 / 講式 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の古代から中世(奈良時代から室町時代)の「文学」の特質を、「唱導」との関わりから追究する研究を行った。「唱導」とは、仏の教えを広く説く行為を指す。寺院における法会や、人々から喜捨を募る勧進の場で行われた。美辞と譬喩を駆使した高座説経だけでなく、身体と道具を駆使した芸能も盛んであった。それら「唱導」の文化と、日本の古典文学が深く関係していることを、いくつかの側面から追究した。 上代(奈良時代)と中古(平安時代)については、唱導に関係する資料が少ない。したがって「文学」との関係を立証することは困難である。しかし、日本に仏教が伝来して以降、唱導が盛んに行われたことは間違いない。「文学」との関係性が示された事例もある。『万葉集』に収録される「しぐれの雨」の歌(巻8・1594番歌)がそれで、題詞から「維摩講」でうたわれたことが分かる。また「秋萩の」の歌(巻10・2205番歌)は、近年発見された木簡から、法会との関係性が指摘されている。これらの歌の表現について、法会との関係性を重視して分析を加えた。その結果、法会の場でうたわれることによって、歌の表現に深みが生じたという結論を得た。唱導が歌を育てたと言える。 平安時代終わり以降については、「源氏供養」という営みに注目した。夢に現れた紫式部を供養することで仏教と縁を結ぶ儀礼で、唱導の名人であった澄憲が関与した。このように夢に死者が現れたことを契機に行う唱導の儀礼が発生する機制を明らかにし、それが文学に素材を提供していく様子を明らかにした。唱導の儀礼から文学が生まれる事例の一つである。 唱導とそれに関係する資料研究も進展した。金沢文庫保管の千字文説草、江戸時代に唱導による教化を目的として作成された経典(正徳版『金光明最勝王経』)、大念佛寺所蔵の融通念仏縁起絵巻に関係する資料、後鳥羽院作の無常講式についての研究が発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
唱導資料には未紹介のものが多くある。よって、海外にあるものも含めて、重要なものを調査・研究する計画を立てていた。また唱導と深く関係する資料(絵画や彫刻、物語草子)についても調査を行う予定であった。しかし、諸事情により調査を実施することができなかった。唱導とその関係資料の調査・研究については、十分に進めることができていない。 唱導と日本の古代・中世文学の関係をめぐる研究については、物語・説話・和歌・歌謡・能・物語草子の各方面から個別に進めることができた。一方、古代・中世文学の展開を追う際、中国・朝鮮半島の唱導を視野に入れて、東アジアの潮流の中で位置づけることも目標にしていた。そのため、敦煌や中国の仏教文化を専門とする研究者を招いて研究集会を実施する計画を立てていたが、諸事情により実現することができなかった。そのため、東アジアを視野に入れて日本文学の特質を唱導の側面から明らかにする研究は十分に進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
唱導とそれに関係する資料については、調査が可能な機関から順次、進めていく。一方、複製も含めて入手可能な資料を揃えることで、調査不足を補うようにする。 研究集会については、関連学会との共催の形も含めて、実現していく。 唱導と日本の古代・中世文学の関係性をめぐる研究については、引き続き、物語・説話・和歌・歌謡・能・物語草子の各方面から進めていく。
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