2020 Fiscal Year Annual Research Report
中近世日本の画題生成における明代出版文化の受容と展開に関する総合的研究
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20H01238
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
齋藤 真麻理 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (50280532)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
門脇 むつみ 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (00406779)
山本 嘉孝 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (40783626)
粂 汐里 国文学研究資料館, 研究部, 特任助教 (50838050)
黒田 智 金沢大学, 学校教育系, 教授 (70468875)
齊藤 研一 立正大学, 文学部, 特任講師 (80846410)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 画題 / 狩野派 / 戯画 / 奈良絵本 / 明代出版文化 / 林家 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に江戸時代前期を中心とした画題生成の諸相をめぐり、計4回の共同研究をオンラインで行った。各回2本ずつの研究発表があり、メンバーの関心のありかを共有するとともに、画題生成史とその土壌の輪郭を捉えることとなった。 具体的には、八百比丘尼説話の生成と展開およびその絵巻化、場面読解などの検討から、新出資料『八百比丘尼縁起絵』の射程が論じられ、狩野派の戯画表象との近似性も指摘された。狩野派の「戯画」については多角的な視点から発表と議論がなされ、狩野昌運筆の狂歌絵巻や、「戯画図巻」に先行する近世初期風俗画など具体的な素材との交渉、金太郎の絵画表象との関係性、さらには徳川政権周辺の人的ネットワークなどが浮かび上がってきた。芸能研究の立場からは「山中常盤」の成立事情と説話的展開、『塵滴問答』との交差等が報告された。また、葛飾北斎の営為への着目から、『絵本孝経』など「孝」の図像化、北斎の漢土表象の方法が論じられ、ありふれた画題・定型からの逸脱の試みとして明代刊本の利用があったことなどが指摘された。明代出版文化の摂取が中近世期の画題生成に貢献した様相が明らかとなったことは大きい。 文献調査は国内に限定し、狩野派の「戯画図巻」の基礎研究および関連する奈良絵本等の作例を探索した。「戯画図巻」諸本の初発に近いと推測される一本、香雪美術館本(伝狩野探幽筆)の調査を実施できたことは大きな成果であった。紙継ぎや傷みの状態等から制作当初の姿も推測され、香雪本の独自表現などの分析を行った。なお、「戯画図巻」諸本中にはしばしば相撲を描く例があり、狩野派内では相撲絵巻も制作されていたことから、江戸時代前期における相撲伝書を視野に入れ、江戸時代前期写『武家相撲絵巻』一巻を見出して国文学研究資料館に備えた。「戯画図巻」を結節点として、芸能としての相撲と相撲画題の生成の具体相を検証中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の流行により、資料調査に困難が生じているため。 主要な海外の所蔵機関(アメリカ合衆国・フランス共和国・アイルランド共和国・イギリス・中華人民共和国等)への渡航調査が実施できず、国内の美術館・博物館における調査についても、受け入れ時期や人数に制限がある。原本調査に代えて、二次的な手段として資料撮影を打診したが、海外機関の場合は体制が整わない状況が続いた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に入り、新型コロナウイルス感染症の流行がやや落ち着いてきたため、国内の資料調査に重点を置いて研究を進めるとともに、海外の所蔵機関については可能なかぎり、資料撮影の交渉を行い、画像による研究を先行させる。
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Research Products
(18 results)
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[Book] 古典の未来学2020
Author(s)
荒木浩・齋藤真麻理ほか
Total Pages
871
Publisher
文学通信
ISBN
9784582364675
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