2021 Fiscal Year Annual Research Report
Research on dvandvas from cross-linguistic viewpoints
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20H01268
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
島田 雅晴 筑波大学, 人文社会系, 教授 (30254890)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 雄一 筑波大学, 人文社会系, 教授 (70280352)
長野 明子 静岡県立大学, 国際関係学研究科, 教授 (90407883)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 等位複合語 / 生成文法 / 形態論 / 外在化 / 等位構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、等位複合語を題材にして等位構造の構造構築過程を生成統語論の視点から検討することを主目的の一つとしている。令和3年度は「ラベル付け理論」に基づいて、「親子」、「手足」などのdvandva型の等位複合語がどのような構造を持っているかについて、一定の見方を提示した。 まず、等位複合語の構造を分析するヒントを得るために、例えば、John and Billのようにandで結ばれた等位句がラベル付け理論でどのように分析されるのかを見ることから始め、Chomsky (2013)をはじめとする先行研究の分析を精査した。そこで共通して問題となっていたのは、いわゆる、「XP-YP問題」である。これは、句と句を「併合」という操作で結合させて新たな句を生成した場合、その範疇をラベル付けの規則で決定することができない、というものである。John and Billが、Johnという名詞句とand Billという等位接続詞句が併合した結果生起した表現だとすれば、その範疇は決まらないことになる。 そこで、多くの先行研究では、John and Billのような等位接続表現の場合、Johnかand Billのどちらかの句がラベル決定規則には不可視であると考え、残った句の範疇がそのまま等位接続表現の範疇になると考えている。Saito (2016)は、語や句をラベル決定規則に不可視なものとする要素を「反ラベル付け要素」と呼んでいるが、等位接続詞andが仮にそうだとすると、and Billはラベル付けに不可視になり、Johnが持つ名詞句という範疇がそのまま等位表現の範疇になると分析できる。本研究は「親子」のような等位複合語もこのような観点から分析できることを指摘し、音形のない反ラベル付け要素を仮定することを提案した。これにより、句と語を並行的に分析する方向性が堅持されることになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題で設定している3つの問いに対して、順調に成果を上げている。第1の問いである等位複合語の通時的変遷については、これまで対象にしてきた古英語、中英語以外に、サンスクリット語などの古典語もデータに取り入れた分析に着手した。また、第2の問いである言語接触が持つ等位複合語生成への影響については、これまで行ってきた英語の語彙を取り込んだ料理名の分析において、聞き取りも含めたあらたなデータ調査を開始した。第3の問いである等位複合語の構造については、ラベル付け理論に基づく分析を提案した。このように、順次研究が進行し、成果の公表も行われている。また、外部の研究者との共同研究にも発展している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度までの研究の成果と進展を踏まえて、当初の計画通り、通時的観点、言語接触論的観点、生成統語論的観点から等位複合語を分析していく。これまで等位複合語として見られていたものが、実はそうではない、という可能性をもつものが存在することもこれまでの研究の結果で示唆されている。今後はこのような新規の課題にも順次対応し、等位複合とは異なる形態統語現象にも調査の対象を広げていく予定である。
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Research Products
(7 results)