2022 Fiscal Year Annual Research Report
ブリティッシュ・ワールドの共通意識と紐帯に関する総合的歴史研究
Project/Area Number |
20H01303
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
竹内 真人 日本大学, 商学部, 教授 (20520729)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
勝田 俊輔 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (00313180)
石橋 悠人 中央大学, 文学部, 教授 (90724196)
馬路 智仁 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (80779257)
松永 友有 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (50334082)
福士 純 東京経済大学, 経済学部, 教授 (60600947)
小川 浩之 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (60362555)
渡辺 昭一 東北学院大学, 文学部, 教授 (70182920)
横井 勝彦 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員(客員研究員) (10201849)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イギリス帝国史 / コモンウェルス / 勢力圏 / 紐帯 / 共通意識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、イギリスが自治植民地や属領でブリティッシュネスという共通意識をいかに創出し、自国の勢力圏としてのブリティッシュ・ワールドを形成してきたかを、①血縁・言語・宗教の共通性に基づく感情的紐帯、②貿易・金融・生産構造に関連する経済的紐帯、③武器移転や軍事援助による軍事的紐帯の関係に注目しながら総合的に解明することを目的としている。その目的を達成するために、令和4年度は、主として以下3つの課題を追究した。第1課題は、感情的紐帯の分析であり、竹内はニュージーランドにおけるイギリス宣教活動に関する未公刊一次史料をニュージーランド国立図書館で収集し、アングロ圏構想の歴史的系譜に関する論文を執筆した。また、勝田はアイルランド総督廃止論が否決された理由をユニオニズムの観点から検討し、石橋は時間に関する科学や技術の広がりをメルボルン天文台の一次史料から分析し、馬路は脱植民地化が進む20世紀半ば以降に太平洋島嶼地域でいかなる政治構想が提唱されたかについて探究した。第2課題は、経済的紐帯の分析であり、松永はジョゼフ・チェンバレンの関税改革運動に関する従来の研究の重要な点を実証的に修正する論文を執筆し、福士は1911年米加互恵協定に関する一次史料の収集と論文執筆を行った。第3課題は、軍事的紐帯の分析であり、小川はアパルトヘイト時代のイギリスと南アフリカの安全保障上の関係について分析し、渡辺はケネディ政権期のパキスタン外交とカシミール問題の背景について考察し、横井は英印間の軍事的紐帯の研究を「軍事同盟・安全保障体制」・「軍事ロジスティクス」・「軍産複合体」などに注目して「軍拡の負の連鎖」の研究へと展開した。また、竹内、松永、福士、勝田は、海外研究協力者のアパラジス・ラムナス、アンドリュー・ディリー、レイチェル・ブライト、フェリシティ・バーンズが執筆した英語論文を日本語に翻訳する作業を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症が収束に向かい、海外の公文書館や図書館での未公刊一次史料の調査が再開されたが、いまだに海外の研究者との交流に重大な支障がでており、研究が、既公刊の二次文献やマイクロフィルムやデータベース、その他オンラインで入手可能な史料調査にとどまるか、海外で未公刊一次史料の収集ができた場合であっても、収集した一次史料の読解や分析が十分にできていないため、研究課題の進捗状況に依然として遅れが生じている。また、軍事同盟を背景として、国境を越えて公式・非公式に展開される「軍事ロジスティクス」に関しても、先行研究が少なく、あっても兵站業務・後方支援の一国史的な解説に終始している。
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Strategy for Future Research Activity |
海外渡航の制約がなくなったことを受けて、令和5年度は海外での未公刊一次史料の調査をさらに加速し、急ピッチで一次史料の読解・分析を行い、研究課題の遅れを取り戻す予定である。また、研究合宿を行い、ブリティッシュ・ワールドの新たな論集を出版する準備も開始する。
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