2022 Fiscal Year Annual Research Report
戦前期東京における住宅開発と生活空間の変容―東京府渋谷区を事例に―
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20H01315
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
根岸 茂夫 國學院大學, 文学研究科, 名誉教授 (30208285)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 和生 國學院大學, 文学部, 教授 (30135488)
上山 和雄 國學院大學, 文学部, 名誉教授 (40137790)
岩橋 清美 國學院大學, 文学部, 准教授 (50749653)
青木 歳幸 佐賀大学, 地域学歴史文化研究センター, 特命教授 (60444866)
宮本 誉士 國學院大學, 研究開発推進機構, 教授 (60601200)
手塚 雄太 國學院大學, 文学部, 准教授 (60802767)
内山 京子 國學院大學栃木短期大学, その他部局等, 准教授 (60850089)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 住宅開発 / 空間空間 / 東京近郊の都市化 / 近現代 / 渋谷 / 代官山 / 松濤 / 鍋島家文書 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、戦前期の東京市近郊地域における住宅と生活空間の変容を、住宅開発を担った開発者たち、その住宅に暮らした生活者たちの双方に着目して明らかにする。都市化・人口増と並行した東京の住宅に関する研究は数多くあるが、都心部近郊地域である渋谷・新宿・池袋では史料の多くが失われており、研究は遅れていた。 本研究は、新発見史料、すなわち戦前から渋谷区代官山で不動産経営を営む朝倉家所蔵文書、同区松濤を開発した旧佐賀藩主・鍋島家旧蔵文書により、戦前期渋谷の住宅と生活空間がいかに形成・変容したかを、開発者と生活者の双方の視点から明らかにし、渋谷の歴史的基層を複眼的に示すものである。研究方法として朝倉家文書班・鍋島家文書班を編成し作業・分析に当り、月1回程度の研究会をリモートで開催し、中間報告と研究発表を実施し研究参加者の相互の連絡を図った。 本年度には令和3年度の作業を継続し、朝倉家文書班は文書目録作成を継続し、史料のデータベース化を進めた。また史料撮影も継続し、朝倉家文書中の図面類と、調査の過程で発見された戦前の不動産信託会社「供託社」関係史料、戦後の土地開発史料の一部を撮影した。 鍋島家文書班は、令和3年度に着手した松濤の開発・分譲過程、及び分譲を行った鍋島家の家政運営と旧藩社会・ネットワークの実態を検討した。本年度には佐賀県立図書館・鍋島報效会及び國學院大學・渋谷区立郷土博物館において調査・史料収集を実施し各資料との比較検討を行った。同時に、鍋島報效会所蔵『早引諸集』の翻刻と分析、鍋島家の家政と松濤地区の開発、佐賀と東京にある鍋島家文書の比較調査研究、鍋島家と佐賀の旧藩社会との関係を分析した。 さらに平成4年12月18日、佐賀市において公開シンポジウム「鍋島家の近代を語るー東京渋谷と佐賀―」を実施し、研究成果の一部を地元に公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度においては令和3年度の作業を継続し、朝倉家文書班は朝倉家文書の文書目録作成を継続し、生活者の実態がわかる個票のデータベース化を進めた。今年度は史料原典の整理とともに撮影史料の調査・データベース化を実施し、昭和20年東京府の委託で調査した渋谷区の貸家調査などの分析を昨年度に引き続き進めた。また史料撮影も継続し、朝倉家文書中の図面類を撮影するとともに、調査の過程で発見された戦前の不動産信託会社「供託社」関係史料、戦後の土地開発史料の一部を撮影した。昭和20年に焼失した渋谷・目黒地区などの借家経営が判明する基本的な史料であり、今後の検討を予定している。 鍋島家文書班は、令和2年度から着手した松濤の開発・分譲過程、及び分譲を行った鍋島家の家政運営と旧藩社会・ネットワークの検討を続けた。昨年度実施した佐賀県立図書館・鍋島報效会及び渋谷区立郷土博物館における調査・史料収集の成果を受けて、國學院大學所蔵資料との比較検討を継続した。佐賀県調査は、鍋島報效会徴古館事務局長の富田紘次氏を研究協力者として実施し、佐賀県立図書館・鍋島報效会所蔵の関係史料を写真撮影した。渋谷区立郷土博物館所蔵史料は、令和2・3年度の調査・写真撮影の成果を生かし、同館学芸員田原光泰氏の協力のもとに関係史料の検討を実施した。特に、鍋島家の家政とともに、鍋島家が松濤を取得して明治初年から茶園を経営し大正期から宅地分譲していく過程の分析、佐賀学の成果を援用して佐賀と東京にある鍋島家文書の比較調査研究、鍋島家の家族や鍋島家から嫁いで渋谷に住んだ梨本宮伊都子、鍋島家と旧藩社会・ネットワークの実態などについて検討を進めた。 昨年12月佐賀市において公開シンポジウム「鍋島家の近代を語るー東京渋谷と佐賀―」を実施し、研究成果の一部を地元に公開した反響は大きく、地元のメディアでも取り上げられた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度であり、研究成果を形にしていくとともに今後の研究の方向性も探る。 朝倉家文書班は、土地整理事業、不動産信託・管理に関する文書の分析から、渋谷に暮らす人々の実態と、朝倉家と中小地主・家主による不動産信託会社「供託社」による住宅開発・経営の過程と戦前期の渋谷区の住宅事情について成果をまとめる。ことに住宅開発の分析、昭和20年東京府委託調査の渋谷区貸家調査、及び渋谷区家屋税台帳の分析成果をまとめる。同時に新発見史料の写真撮影を継続し、分析とともに建築史など他分野の研究者と連携し今後の研究の方向性を探っていく。さらに朝倉家文書の所蔵者の意向に添い、資料の保存とアーカイブス構築に協力する。 鍋島家文書班は、今まで分析を進めていた松濤の開発・分譲過程、及び分譲を行った鍋島家の家政運営と旧藩社会・ネットワークの実態を総合的にまとめる。佐賀県立図書館・鍋島報效会及び渋谷区立郷土博物館などにおいて調査・撮影した史料と、國學院大學所蔵資料との比較検討について、研究協力者の鍋島報效会徴古館事務局長富田紘次氏、渋谷区立郷土博物館学芸員田原光泰氏を交えて分析を進める。その他関連機関も調査し、住宅開発の過程、家政運営と旧藩社会・ネットワークの実態を明らかにする。とくに鍋島家の家政と松濤地区の開発、佐賀と東京にある鍋島家文書の比較調査研究、鍋島家の家族や同家出身の梨本宮伊都子と渋谷との関係、鍋島家と旧藩社会・ネットワークの実態などについて今まで進めてきた分析を統合する。 本年度には佐賀の研究分担者・研究協力者が東京に出張し、東京所在の史料を調査するとともに東京・佐賀で相互に進めてきた研究成果を統合し、今後の研究の方向性を模索する。 この機会に地域との連携と研究の地域還元を図り、渋谷区代官山において地域の方々に向けたシンポジウムを実施する。さらにシンポジウム・鍋島家文書の翻刻など成果の一部を刊行する。
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Research Products
(8 results)