2021 Fiscal Year Annual Research Report
Historical archaeology on the ruling form and internal structure of the ancient Near Eastern empires focusing on the frontier region
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20H01328
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
西山 伸一 中部大学, 人文学部, 教授 (50392551)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡部 展也 中部大学, 人文学部, 准教授 (10365497)
津村 眞輝子 (財)古代オリエント博物館, 研究部, 研究員 (60238128)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 境界域 / 帝国 / アッシリア帝国 / サーサーン朝 / 鉄器時代 / 支配構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も引き続きコロナ禍により渡航が困難であったが、現地とのオンラインミーティングなどの開催により、現地からの状況を把握することができた。また短期間ながら現地に渡航できた研究協力者より、現地における衛星画像を利用したフィールド調査の成果を入手することができた。このため、文献・考古学と地理情報科学の分野において新たなデータをもとに研究を進めることが可能となった。ヤシン・テペ遺跡というアッシリア帝国の拠点都市の周辺には思いのほか数多くの小規模集落の居住の痕跡や水を運ぶ運河などが整備されていることが判明した。ただ、現在の地表面には、ほとんど遺物が散布していない遺構もあり、最終的な確認は、今後の現地における発掘調査に期待したい。また貨幣学の分野においては、イラン側のクルディスタン(ウルミエ湖周辺)で出土したコインのホード(宝蔵)の出版物について分析を行った。ザグロス山脈の山麓には、将来的にもまとまった数のコインが出土する可能性を示唆しており、サーサーン朝ペルシア帝国の複雑な地方統治形態がコインから研究する価値があることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究2年目に入り、コロナ禍により現地でのフィールド調査の実施にも少し光が見えてきた。今年度は、現地に海外の研究協力者が入ることができ、簡便なフィールド調査を実施することができた。主に、衛星画像の分析から遺跡・遺構と思われるものを現地において観察・記録する作業であった。その結果、思いのほかヤシン・テペ遺跡というアッシリア帝国の拠点都市の周辺には、集落や水路があったことが判明し、そのうちいくつかは、アッシリア帝国の時代に同定できることも確認できた。このことは、拠点都市が、孤立して存在していたのではなく、周辺に農耕村落などを配置しつつ維持されていたことを示唆する。また帝国がどのようにこの拠点都市を支配していたのかは、エリート層の遺構、遺物の詳細な分析が必要であることも今年度確認できたことが重要である。
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Strategy for Future Research Activity |
フィールド調査が本格的に再開することを目標におき、文献・考古学分野では、過去の調査データの成果を進めるとともに、今年度取得できたデータの分析をすすめ、ヤシン・テペ遺跡のアッシリア帝国時代の周辺景観を復元するよう努める。またエリート層の遺構や遺物に帝国の支配構造の鍵があることが推測されるため、過去に調査したレンガ墓やエリート層の邸宅に関する研究を進める。地理情報科学の分野では、引き続き衛星画像の分析をすすめ、より広範囲にどのような遺跡や遺構が広がるのか検証する。特にヤシン・テペ遺跡の北に位置する山岳地帯がコミュニケーションの「要(かなめ)」となると考えられるので、この地帯も視野に入れて分析をおこなう。貨幣学の分野では、引き続き過去の資料の収集、および現地博物館において新資料がないか探索することを継続する。
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