2020 Fiscal Year Annual Research Report
Exploration of the diachronic nature of ancient pottery in Japan based on a multifaceted chronological analysis
Project/Area Number |
20H01354
|
Research Institution | Kyoto Tachibana University |
Principal Investigator |
中久保 辰夫 京都橘大学, 文学部, 准教授 (30609483)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田 裕樹 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (70416410)
岩越 陽平 奈良県立橿原考古学研究所, 調査部調査課, 主任技師 (60815067)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 日本古代 / 土師器 / 須恵器 / 土器編年 / 饗宴 / 陶邑窯跡群 / 猿投窯 / 三次元計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度となる2020年度では、本研究の2つの柱とする複眼的編年検証と日本古代の饗宴論を基軸として研究に着手した。この年度は新型コロナウイルス感染拡大により、上半期は資料調査もままならず、研究室への立入りも制限された。しかし、できる準備を進め、下半期にはオンライン研究会(9月19日、12月26日、1月24日)に加え、3月13日には愛知県陶磁美術館で複眼的ワークショップを開催するなど、着実に調査研究を実施できた。以下に概要を記述する。 1)複眼的編年検証 編年上重要となる資料を選定し、複数の理化学的年代測定法により暦年代を検証することに加え、測定成果を分担者・協力者と考古学的に再検討した。2020年度は4つの研究が遂行できた。a)酸素同位体比年輪年代法による成果が得られている奈良県新堂遺跡を対象に、スス付着土器10点を選定してAMS放射性炭素年代測定を実施し、有意なデータを獲得。b)考古地磁気年代測定がなされた陶邑窯跡群出土須恵器について、型式学的検討を実施(12月26日)。c)予定していた布留遺跡出土土器の光ルミネッセンス年代測定は、資料選定とその土器実測等を進めた。年代測定は機器故障より当面見合わせることになった。d)3月13日に愛知県陶磁美術館において、猿投窯出土編年基準資料を調査。 2)日本古代の饗宴論 非日常的な共飲共食である饗宴を主題として、研究分担者2名及び協力者12名と、研究会および複眼的ワークショップで議論を重ねた。研究会は、オンライン開催とし、9月19日に研究目的を確認するキックオフミーティングを実施し、1月24日には西弘海氏の「土器様式の成立とその背景」の論文講読会の開催。最新の研究状況や課題について参加者と議論し、録画によって情報共有した。試行的に須恵器大甕の三次元計測も実施できた。 研究の成果は論文、オンラインでの口頭発表等で公表できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度となる本年では、新型コロナウイルスの感染拡大により、研究活動の自粛を余儀なくされる時期があった。しかし、オンライン会議等を活用し、研究分担者・協力者と研究目的と実施計画を確認・共有した上で、おおむけ研究計画通りに遂行できた。ただし、饗宴論に関わる米国南西部の遺跡踏査はできなかった。また、機器故障によって布留遺跡出土土器の光ルミネッセンス年代測定も持ち越しとなった。以下に、現在までの進捗状況についてまとめたい。 <複眼的編年検証>予定していた分析対象である、a)新堂遺跡初期須恵器・土師器、b)須恵器編年基準となる大阪・陶邑窯について、分析・検討を進めることができた。特にb)については、型式認定、土器の焼成・保管・供給・使用・廃棄といったライフサイクル、出土状況といった観点から分担者・協力者と議論でき、須恵器の編年上の問題点などが明確となった。3月13日に開催した愛知県陶磁美術館での複眼的ワークショップでは、猿投窯の基準資料を熟覧し、編年上の課題を議論した。また企画展「日本陶磁の源・陶邑窯」を見学し、資料を前に比較検討もできた。 <日本古代の饗宴論>9月19日、12月26日、1月24日にオンラインで研究会を実施したことに加え、3月13日の愛知県陶磁美術館における複眼的ワークショップ時に対面で意見交換を行った。1月24日の論文講読会では、現在の編年課題を議論するとともに、古墳時代から飛鳥時代への供膳器の構成や伝統性について有意義な意見交換ができた。さらに、土師器と須恵器の機能的関係を検討するために、貯蔵器と供膳器の容量計測を実施した。韓半島加耶地域出土陶質土器甕の容量計測にも着手し、その一環として日本の初期須恵器大甕(高島市・南市東遺跡出土資料)の三次元計測と容量計算も実施した。 また国際発信に備え、日本古代土器の基礎研究や器種について英語表現を検討した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は研究初年度であり、30代を中心とする15名の土器研究者が研究目的と実施計画を確認・共有し、複眼的ワークショップを通じ、議論を深められたことが大きい。研究は新型コロナウイルスの蔓延により、海外渡航や対面開催などが制限された。しかしながら、オンライン会議等を活用し、おおむね順調に進んでいる。また、不慮の機器故障により、光ルミネッセンス年代測定は見合わせとなったが、布留遺跡資料の選定と実測といった準備は進めることができた。今後の研究の推進方策は、感染拡大に留意しつつ、基本的に研究計画通りに遂行することである。そして、部分的に研究目的と関連付けた調査手法の開発にも取り組みたい。 <複眼的編年検証>次年度は、次の分析を実施予定である。a)新堂遺跡河道資料はAMS法による放射性炭素14年代測定値が得られたため、来年度、複眼的ワークショップで、型式学的・層位学的に再検討する。b)進出資料として、京都府亀岡市金生寺遺跡で布留2式~TG232型式期の土器群が得られており、AMS法による放射性炭素14年代測定を計画、c)布留遺跡出土土器について光ルミネッサンス年代測定を実施。 <日本古代の饗宴論>2020年度に着手できた貯蔵容器変遷の日韓比較、古墳時代から飛鳥時代にかけての土器様式の変化とその背景に関する複眼的な議論を継続して進める。良質な事例を中心とする資料(編年基準となりえる新出資料など)について複眼的ワークショップで検討するとともに、饗宴論に関する英書講読会などもオンラインで実施する。また、前向きな計画変更として、饗宴の準備としての調理復元についても研究を掘り下げ、新たな土器使用痕跡の記録手法を開拓する。
|
Remarks |
・アウトリーチ活動の一環として、リーフレット京都 (377) に「2019 合同企画展「焼き物からよむ平安時代」を通して(1)-古代の酒造りを焼き物の破片から探る- 」を執筆した。 ・京都市営地下鉄椥辻駅構内の「アートロードなぎつじ」にて、京都市山科区出土古墳時代土器資料の展示を行った(2020年7月15日 - 2021年3月10日)
|
Research Products
(8 results)
-
[Journal Article] 大和布留遺跡における歴史的景観の復元2020
Author(s)
池田保信, 石田大輔, 石田由紀子, 太田三喜, 岡田憲一, 木村理恵, 桑原久男, 小泉翔太, 中久保辰夫, 松本洋明, 溝口優樹, 三好裕太郎, 森暢郎, 山本亮
-
Journal Title
研究紀要(公益財団法人由良大和古代文化研究協会)
Volume: 24
Pages: 1-152
-
-
-
-
-
-
-