2022 Fiscal Year Annual Research Report
Exploration of the diachronic nature of ancient pottery in Japan based on a multifaceted chronological analysis
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20H01354
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Research Institution | Kyoto Tachibana University |
Principal Investigator |
中久保 辰夫 京都橘大学, 文学部, 准教授 (30609483)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田 裕樹 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (70416410)
岩越 陽平 奈良県立橿原考古学研究所, 調査部調査課, 主任技師 (60815067)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 日本古代 / 土師器 / 須恵器 / 土器編年 / 饗宴 / 陶邑窯跡群 / 布留遺跡 / 食文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年目となる2022年度は、2020・21年度に引き続き、本研究が2つの柱とする複眼的編年検証と日本古代の饗宴論を基軸として研究を遂行した。ハイフレックス型の研究会(5月29日、10月1日、2月14日、3月4日)に加え、5月14日に陶邑古窯址群出土須恵器(5世紀~7世紀)、8月17日に石上神宮所蔵須恵器大甕(8世紀)・布留遺跡資料、10月2日に崎玉古墳群二子山古墳(6世紀)、1月5日に愛知県陶磁美術館(9世紀)などの資料調査を実施した。30代を中心とした研究分担者・協力者総勢17名によって主要資料の年代論、通時代的な饗宴論など虚心坦懐に議論できる場を醸成することができ、研究を深めることができている。以下に概要を記述する。 1)複眼的編年検証 複数の理化学的年代測定法により暦年代を検証し、さらに測定成果を型式学的・層位学的に再検討するという二重の意味を持つ複眼的編年検証を進めた。a)陶邑窯跡群の型式設定資料を熟覧し、編年上の問題と理化学的年代測定の限界について、資料を手に取りながら、意見交換ができた。また、編年上の課題となった点は、今城塚古墳資料などとの比較も含めて、ハイフレックス型の研究会で討議した。b)古墳中期、古墳後期、奈良時代後期、平安時代前期須恵器に関する編年検討を進め、成果および論考を公表した。c)光ルミネッセンス年代測定・考古地磁気年代測定は追加資料分析の準備をした。 2)日本古代の饗宴論 非日常的な共飲共食と定義できる饗宴を主題として、研究会および複眼的ワークショップで議論を重ねた。研究会はハイフレックス型で行い、饗宴に関する英書輪読、日本列島での事例との比較などを熟議した。また、日韓の貯蔵器の容量について計測事例を増加し、また古墳時代復元土器と復元調理実験をもとに、調理痕跡の付着状況や調理内容の復元を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主要資料について複眼的ワークショップを対面で開催し、さらにハイフレックス型の研究会により、本研究課題はおおむね順調に進展した。そして、3年間の研究蓄積が熟してきたため、研究分担者および協力者と相談し、内容を分担し、『日本古代の土器文化』と題する書籍としてまとめることを企画した。 <複眼的編年検証> a) 陶邑古窯址群の編年基準資料について、妥当性を認めるとともに、TK43号窯、TK217号窯など、課題がある型式期について再検討を進めた。b)岡本山A3号墳(高槻市)、クワンス塚古墳(加西市)、今城塚古墳(高槻市)、窟屋扇ノ坂古墳(三木市)、南畑古墳群(高島市)、石上神宮所蔵須恵器大甕(天理市)、布留遺跡(天理市)、嶋上郡衙遺跡(高槻市)、平安京跡(京都市)、東播三木窯(三木市)などの編年的位置づけを行い、一部を論文や報告書、研究発表で公表した。c)本科研で推進をしている年代測定は、破壊分析が必要となることから、資料記録のために三次元計測に対する体制をさらに整え、これを実施した。 <日本古代の饗宴論> 2月14日は英語圏での饗宴論に関する論文講読会を開催し、3月4日には研究分担者・協力者と『日本古代の土器文化』について構成案や日本古代時研究上の現状と課題について、虚心坦懐に話し合った。また、11月29日に装飾須恵器に対し、SfM/MVS技術写真測量を実践するなど、饗宴論関連土器資料の記録手法開拓をすすめた。さらに、昨年度、測定実績ができたスス付着範囲や被熱範囲等を高精度の分光情報として記録する分析は、今年度、実験土器を中心に計測した。さらに調理実験についても蒸す調理を中心に、コメ品種や調理過程を試行錯誤しながら、復元案を模索した。以上により、饗宴論の一角をなす、実証的な議論ができる基礎を開拓できた。したがって、当初計画以上に進展がみられた部分もある。
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Strategy for Future Research Activity |
研究はおおむね順調に進展しており、研究計画に掲げたTG232~TK73型式期、TK43~209型式期、平安Ⅰ~Ⅱ期の編年論的検討を進めることができている。最終年度は、これまで十分に検討できていなかった時期の複眼的ワークショップの開催を行い、検討を深める予定である。推進方策の詳細は次の通り。 <複眼的編年検証> a)古墳時代前半期の土器群が得られた新出資料である大阪府高槻市上牧遺跡出土土器など、補足的にAMS法による放射性炭素14年代測定を実施、b)布留遺跡出土土器について光ルミネッサンス年代測定の完了。c)TK43~209型式期を中心に土師ノ里遺跡出土資料、飛鳥Ⅲを中心に大官大寺下層SK121の基準資料について複眼的ワークショップの開催。 <日本古代の饗宴論> これまでに分析の蓄積ができた貯蔵容器変遷の日韓比較、古墳時代から飛鳥時代にかけての土器様式の変化と饗宴の場に関する複眼的な議論を継続して進める。また、饗宴の器と場といった最終的な消費の側面だけではなく、饗宴に至る準備や日常性との比較として、貯蔵器、煮炊器の分析が重要と考え、その基礎検討を深化させる。具体的には、2020・21年度に進めることができた、布留遺跡出土初期須恵器未報告片などの三次元計測による資料化、5~7世紀代にかけての煮炊具に付着した調理痕跡の高精度分光情報記録、復元カマドと土器を利用した復元的調理実験を推進することである。これによって、醸造量の変化、料理内容のエスニシティや階層性などを議論する基礎情報としたい。 そして、本研究課題の最終年度である本年度において、成果公開を活発に行うとともに、『日本古代の土器文化』刊行に向けた準備を遂行する。また、調査計画としてあげていた日本古代土器の概説webサイトも完成させる。
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Remarks |
歴史を楽しもうかい令和4年度講座(2023年3月18日)にて「𤭯ハソウ(ハソウ)を用いた儀礼と古代日韓交流-倭の五王の時代と東アジア-」と題する発表、令和4年度あべの市民セミナー(2023年1月19日)にて「日本の食文化「おおむかし」と「いま」~考古学からみたSDGs~」という発表を行うなど、アウトリーチ活動にも努めた。
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Research Products
(17 results)