2021 Fiscal Year Annual Research Report
最新型AMS装置の高精度化による単年14Cスパイク年代決定法の研究
Project/Area Number |
20H01369
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
門叶 冬樹 山形大学, 理学部, 教授 (80323161)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮原 ひろ子 武蔵野美術大学, 造形学部, 教授 (00532681)
尾嵜 大真 東京大学, 総合研究博物館, 特任研究員 (20399265)
白石 哲也 山形大学, 学士課程基盤教育機構, 准教授 (60825321)
三宅 芙沙 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 准教授 (90738569)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 加速器質量分析装置 / 年代測定 / 半導体検出器 / 14Cスパイク |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、太陽活動や太陽圏環境の変動の他、天体現象にともなうと考えられる突発的な宇宙線増加現象が、14C濃度の異常上昇(14Cスパイク)として過去に度々発生していたことが明らかになりつつある。日本で発見された14Cスパイクを用いた新しい年代測定法を世界に先駆けて確立するために、樹木単年輪中の14C濃度を高精度に分析するための研究開発を開始した。本年度は、山形大学の最新型コンパクトAMSシステム(NEC社製 0.5MV-1.5SDH)を用いて、十分な統計精度と低い系統誤差による14C濃度分析を目標に、以下の開発研究を行った。 まず、国際原子力機関(IAEA)が提供している標準試料C6(ANU スクロース)とC7(シュウ酸)の14C濃度について、これまでの約10年分のデータを解析し、文献値との比較を行った。その結果、C7については49.53±0.13pMCの結果が得られ、文献値の49.53±0.12pMCと良い一致を示した。一方、C6に対しては150.39±0.29pMCの結果が得られ、文献値の150.61±0.11pMCよりも低い14C濃度の結果となった。C6試料については、Xu等によって我々の測定値よりもさらに低い150.16 ± 0.02という値が報告されており、現在、パレオ・ラボ社とのデータ提供も受けて、IAEA-C6の14C濃度について調べることにした。 続いて、年輪年代法により年代が付された過去3000年間の試料の中から、樹木単年輪試料を選別し、薄膜状化と化学処理により汚染除去を行った後、塩素漂白、濃アルカリ処理によってα-セルロースを抽出した。抽出したα-セルロース試料を錫ボートに包み、山形大学総合研究所に設置した自動グラファイト作製システムでグラファイト化を行った。そしてグラファイト化した試料をAMSで分析し、14Cスパイクの探査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
試料中の14C濃度を高精度に分析するための研究開発は、順調に進展している。今年度は、AMS焦点面に設置するために開発した位置有感型放射線検出器の不感層を評価するための開発を行った。具体的には、16―64チャンネルの電極を持つシリコン半導体検出器に241Amからのα線を自動で0度と45度の方向からスキャンし、入射角の違いによるエネルギーピークの差から不感層を評価できるシステムを構築した。また、モンテカルロシミュレーションコードPHITSを用いた比較を行い、その結果を比較することで各ピクセルの不感層厚を求める手法を確立した。 国産樹木単年輪中からの14Cスパイク検出の研究については、青森県下北半島から採取されたアスナロ試料の測定を行った。使用したアスナロは年輪年代が西暦1191年から1330年、1329年から1450年のサンプルであり、各サンプルから1年輪試料を剥離し、化学処理を施して試料から不純物を取り除く作業を行ったのち、塩素漂白、濃アルカリ処理によってα-セルロース抽出を行った。そしてセルロース試料に対してAMS分析を行い、14Cスパイクイベントの探索を行った。また、14Cスパイク年代測定方法の文化財試料への応用研究については、唐古・鍵遺跡から出土した炭化物試料について、AMS測定を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
コンパクトAMS用に開発した64チャンネルの電極を持つシリコン半導体の不感層の厚み、エネルギー分解能、そして位置分解能を専用に開発したα線源スキャン装置を用いて調べる。そして、AMS装置の焦点面に設置して、試料が装填されたカソード位置(最大40個)に対する14濃度の位置依存性および測定回数に対する変動を調べ、十分な統計精度(~0.1%)と低い系統誤差(~0.05%以下)による0.15%精度の14C分析を目標に開発研究を行う。 国産樹木単年輪中からの14Cスパイク検出の研究については、アスナロ試料の単年輪の他、新しく年輪年代が決定した天童若松寺1000年杉を対象に14C濃度測定を行い、スパイク検出の他、太陽活動のシュワベサイクルがその濃度分布から確認できるか研究を行う。 また、14Cスパイク年代測定方法の文化財試料への応用研究については、引き続き唐古・鍵遺跡から出土した木材についてAMSを用いた14C濃度測定を行う。
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Research Products
(6 results)