2020 Fiscal Year Annual Research Report
Reconstruction of the study of tattoos in Asia-Pacific: The body from perspectives of sensation, affect, and power
Project/Area Number |
20H01411
|
Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
津村 文彦 名城大学, 外国語学部, 教授 (40363882)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 芳美 都留文科大学, 文学部, 教授 (50363883)
桑原 牧子 金城学院大学, 文学部, 教授 (20454332)
山越 英嗣 早稲田大学, 人間科学学術院, 助教 (00843822)
大貫 菜穂 京都芸術大学, 芸術学部, 非常勤講師 (20817944)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | イレズミ / 東南アジア / 伝統文化 / マルケサス諸島 / 身体 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、彫り師やクライアントなど「人」に注目して研究を開始させた。知識と技術の習得過程、イレズミをめぐる言説や情動を対象とするとともに、次年度以降のフィールド調査に向けた調査基盤の整備を行う予定であった。だが、前年末より世界的に広がった新型コロナ感染症の影響により、当初計画していた海外・国内でのフィールド調査を行うことは困難となったが、文献調査や研究期間の延期などによって対応を行った。 津村は、文献調査に加え、実施時期を延期してタイ、カンボジア、ラオスにて呪術的イレズミの現地調査を実施した。特に東南アジアにおける、伝統文化としてのイレズミ保護の取り組みの情報を収集した。桑原は、マルケサス諸島において被施術者、なかでも戦士のイレズミに着目して研究した。社会変化による集落間の戦争の増減が戦士のイレズミの形状にいかに反映したかを16世紀から20世紀初頭の史資料を使って考察した。山越は、沖縄での現地調査は中断したが、タトゥーに関する欧文文献を精読し、日本との比較を行った。また、現代日本社会のタトゥーをめぐる英語での論文執筆を行った。山本は19世紀末に外国人客に施術した彫師「彫千代」こと宮崎匡に着目し、英米で刊行された新聞記事や滞在記などから、施術の様子を分析した。大貫は、日本の彫師へのインタビュー調査ができなくなったため、「日本伝統刺青(ほりもの)」のイメージ形成の研究を行った。東映太秦映画村・映画図書室にて、文献調査と当時の映像制作スタッフへの聞き取り調査を行った。研究協力者の南は、ニュージーランド・マオリのタトゥー、タ・モコの彫師の近年の実践等についての文献を収集した。 コロナ禍のため現地調査が不可能であったため、研究手法の多少の見直しは必要とされたが、東南アジア、ポリネシア、日本などの各地におけるイレズミ施術者の基本情報の収集は十分に実施できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、それぞれの研究者が国内外にて現地調査を行う予定であったが、2019年末より世界に広がった新型コロナ感染症の影響により、令和2年度内に予定していたすべての現地調査が不可能になってしまった。ある部分は文献調査を行い、またある部分は調査期間を延期することによって対応せざるを得なかった。本来は年度ごとに積み上げて研究を進展させるべきものであり、また対面でのインタビューができないために多少の困難は抱えることになったが、それ以外の点ではおおむね初年度計画していた研究項目を進展させることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度の「人」に重点を置いた研究を踏まえ、次年度においては当初の計画通り「モノ」に焦点を移しながら研究を展開させる予定である。 津村は、呪術イレズミをめぐる空間構成のうち祭壇に注目する。イレズミの施術現場には、ヒンドゥー=バラモン系の信仰と結びついた祭壇が置かれることが多く、そこでの神像や仮面、祭具のあり方について検討を進める予定である。桑原の研究では、マルケサス諸島だけでなくオセアニア広域において、被施術者ごとのイレズミの研究が必要であることがわかった。今後はポリネシアだけでなく、メラネシア(ソロモン諸島)やミクロネシアのイレズミについて被施術者ごとに文様を検証する予定である。山越は、過去に千葉県や沖縄県で実施したインタビューの文字起こしや、収集したタトゥーの画像データを用いて、「モノとしての身体」を通じていかなる物語性が立ち上がるのか考察する予定である。山本は、台湾および沖縄において、彫師へのインタビュー、下絵や撮影された写真などの「モノ」を素材としてイレズミという施術行為の社会的環境を検討するとともに、その現代的状況をめぐって現地調査を実施する予定である。大貫は、日本人彫師へのインタビュー調査を目指しながら、引き続き東映太秦映画村での調査を行う。役者やスタッフが、ほりものを見せるのにふさわしい衣装、身振りなどを外部で会得し映像作品に活かしていることが判明したため、映像作品を彩る「モノ」がどのような知によってできたのかを調査する。研究協力者の南は、タ・モコの近年の実践についてのフィールド調査を実施するとともに、最新の研究資料等の収集と検討を行う予定である。
|
Remarks |
プラウパン・ポンブン、ホンフアン・ブアラパー、ソンウィット・ピンパカン、(校閲)津村文彦、『ワットチャイシー寺院のシンサイ物語』(日本語)、コンケン大学人文社会学部、2020年、56頁.
|
Research Products
(10 results)