2022 Fiscal Year Annual Research Report
Reconstruction of the study of tattoos in Asia-Pacific: The body from perspectives of sensation, affect, and power
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20H01411
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
津村 文彦 名城大学, 外国語学部, 教授 (40363882)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山越 英嗣 都留文科大学, 文学部, 准教授 (00843822)
桑原 牧子 金城学院大学, 文学部, 教授 (20454332)
大貫 菜穂 京都芸術大学, 芸術学部, 非常勤講師 (20817944)
山本 芳美 都留文科大学, 文学部, 教授 (50363883)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マテリアリティ / 身体 / 物質文化 / イレズミ / タトゥー |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は「制度」に注目した。調査地域でのイレズミの法的位置付けをめぐる情報を収集し、当局の規制と運用について地域間比較を試みた。また地域間の相互交流とSNSの利用がもたらした変化、および新型コロナ感染の広がりに伴うタトゥー実践の変化について、彫り師及びクライアントを中心に情報を収集した。 津村文彦は、2022年8月にタイにてバラモン系リシを中心に聞き取りを行った。特にバンコクの複数の占星術協会が宗教的知識のオンライン講座を開始して地方の呪師や彫り師に影響を及ぼしている状況について情報を収集した。桑原牧子は、タヒチで若手彫師を複数抱えるショップを追加して調査を行った。タトゥーマシンがコードレスのペン型になり、軽量で操作性も改善され、若手彫師の技術習得が容易になった。デザイン準備のためにiPadを使用するなどIT化の進展が伺えた。山本芳美は、日本社会におけるイレズミ表現の扱いについて、1950年代初頭の映画検閲から検討する『映画倫理規程審査記録』から関連する記述を抽出して表を作成した。東映太秦映画村・映画図書室、神戸映画資料館で当時の映画と脚本、プレスシートなどの諸資料を確認し、メディア制度との関連を精査した。山越英嗣は日本社会においてタトゥーを入れる行為またはタトゥーを入れた身体が基点となり、いかなる出来事を引き起こすかという点について過去に千葉市で行ったデータをもとに論文の執筆を行った。大貫菜穂は、東映太秦映画村図書室での調査をもとにイレズミのイマージュの映像業界システムへの位置づけについて検討した。研究協力者の南玲子は、2022年12月から1月にニュージーランドにおいて現地調査を実施した。彫師のライフスタイルの変化やタ・モコをめぐる国内の状況、国際的な先住民の協調について情報収集を行った。 また中間報告の論集(『身体を彫る、世界を刻む』春風社、2023年)を出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、年次ごとに各研究者が現地調査により情報収集を計画していたが、新型コロナ感染症の影響により、2021年度まで多くの調査が困難になった。そのため、研究計画の一部が後ろにずれ込むことになったが、2022年度の後半には多くの地域で現地調査がコロナ禍以前同様に可能になったため、概ね、計画していた研究項目を進展させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
翌年度は、本研究課題の最終年度となるため、これまでの研究の総括を行う予定である。令和2年度は「人」、令和3年度は「モノ」、令和4年度は「制度」に注目することで、当該社会におけるイレズミの位置づけをめぐって研究を展開してきた。研究期間の初年度よりコロナ禍で海外および国内の実地調査が困難となったが、今年度よりほぼすべての地域で実地調査が可能になったため、十分でないデータについては補完的な調査を行いながら、研究課題全体の総括を行う予定である。 津村は、タイおよび東南アジアの他地域において、呪術イレズミのサックヤンが異文化の人々にどのように受容されているかを明らかにするため、いくらかの補足的調査を実施する。桑原牧子はタヒチのイレズミ施術の道具の変化を踏まえ、「彫ること」と「描くこと」の違いを考察する。このような道具や施術方法の変化がイレズミの文様・様式、彫師の師弟関係や技術継承などに与える影響について調査する。山本芳美は、引き続き、東映太秦映画村・映画図書室において、引き続き関連する映画資料を確認する。松竹大谷図書館、川喜多記念映画文化財団などで、脚本や映画などの1950年代初頭の映画検閲関連資料を確認・収集する予定である。山越英嗣は千葉市のストリートにおけるタトゥーの事例を相対化するために、全国的にみても多数のタトゥーショップが営業を行っている沖縄・那覇市での現地調査を実施する。大貫菜穂は、当初きわめて困難とされていた日本で唯一の刺青絵師・毛利清二氏に直接調査をする機会を得たため、今後も継続的調査を進展させる。研究協力者の南玲子は、収集した資料の分析を進め、今回の調査で判明した先住民の協調や相互の影響により変化するイレズミについて検討を進める。また他の研究者を含めたタトゥー文化研究会を引き続き開催して研究成果の共有を図る。
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Remarks |
その他の研究成果: 山本芳美さんインタビュー 2023年1月11日 於:「ブック・ラウンジ・アカデミア」 https://www.bookloungeacademia.com/301/ 山本芳美さんインタビュー 2022年7月31日 於:「Fashion Tech News」 https://fashiontechnews.zozo.com/research/yoshimi_yamamoto
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