2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20H01435
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
深町 晋也 立教大学, 法学部, 教授 (00335572)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仲 真紀子 立命館大学, OIC総合研究機構, 教授 (00172255)
石綿 はる美 一橋大学, 大学院法学研究科, 准教授 (10547821)
後藤 弘子 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (70234995)
久保野 恵美子 東北大学, 法学研究科, 教授 (70261948)
矢野 恵美 琉球大学, 法務研究科, 教授 (80400472)
成瀬 剛 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 准教授 (90466730)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 児童虐待 / 家族と刑法 / 体罰 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3(2021)年度は、児童虐待に関する基礎研究を進め、かつ、その成果を公表した。まず、研究分担者のみならず多方面の研究者からなる研究会を年に3回開催し、児童虐待を巡る諸問題を、ドイツ法、アメリカ法といった比較法的見地から考察し、刑法及び刑事訴訟法の観点からの検討に加えて、社会保障法や民法といった刑事法以外の法領域からの検討を行った。こうした研究会の成果として、研究分担者による論文等が公表された。 次に、研究代表者による成果公表として、①単著(書籍)の公刊、②単著(論文)の公刊、③学会における報告がある。①につき、児童のような家庭内における脆弱な存在に対する刑法的な保護を如何にして及ぼすことが可能かつ妥当かという観点から、『家族と刑法:家庭は犯罪の温床か?』という書籍を公刊した(研究分担者の石綿はる美准教授によるコメント付き)。本書では、児童虐待を巡る様々な問題に関する刑法的な規律について広く論じた。特に、2019年における児童虐待防止法の改正(体罰禁止の明文化)を受けて、体罰が刑法上如何に規律されるようになるのかという問題を概観しつつ、児童虐待には至らないが類似の性質を有する家庭内の受動喫煙や、児童の最善の利益に影響を与える親による拐取といった問題について、広範に検討を加えた。 更に、②につき、子に対する体罰を巡って近時暴行罪・傷害罪による立件が急増している現象を分析しつつ、それを具現化したと見られる裁判例を採り上げて、その判断構造及び問題点を分析した。また、保護責任者不保護罪とネグレクト等の関係を分析した論文を公表した。③につき、日本刑法学会第99回大会(2021年5月29日)分科会Ⅲにおいて、「児童虐待と刑事的介入」と題し、児童虐待の刑法的規律のあり方及びその問題点について分析を加えた。その内容をまとめた論文については、2022年度に公刊される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3(2021)年度は、国内外の児童虐待に関する問題事例や研究動向を調査・検討しつつ、我が国の児童虐待を巡る様々な問題について分析を加え、その一部については成果公表を行った。具体的には、児童虐待を巡る刑法的規律に関して、ドイツ語圏各国の基礎的な調査を行い、同時に我が国における裁判例等を渉猟し、問題状況を把握した。また、児童に対する身体的虐待につき、「軽微」な事案を中心に研究を行い、懲戒権規定との関係で一定の議論枠組みを示した。 更に、児童虐待と強い関連性を有する諸問題、例えば親による子の拐取といった問題についても、従来必ずしも自覚的に論じられていなかった事案類型について積極的に調査し、分析を加えた。この分析結果は、(2022年度の業績となるが、)2022年4月に既に公表されている。 このように、本研究課題については相当程度進捗しているものと評価し得るが、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の拡大のため、国外出張による調査がなお十分になされていないこともあり、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4(2022)年度においては、依然としてCOVID-19による影響が残ることが見込まれるものの、国外における研究協力者と密に連携しつつ、国外調査を行う予定である。具体的には、ドイツにおける「家族と刑法」の第一人者と目される研究者が所属する大学附属研究所において、短期の研究滞在を行い、現地の問題状況について調査・ヒアリング等を行うことを予定している。併せて、国内における事案調査・ヒアリング等も行う予定である。 また、児童虐待を巡る刑事法的問題を領域横断的に分析するために、研究分担者のみならず多方面の研究者・児童虐待関連の実務家から成る研究会を対面又はオンラインで定期的に開催する。これにより、児童虐待の実務的な要請を踏まえつつ、法理論として考察するための議論枠組みを構築するための研究を更に進める予定である。その過程で、雑誌媒体において児童虐待に関する特集企画をオーガナイズし、研究成果を公表することも予定している。
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