2021 Fiscal Year Annual Research Report
公共政策におけるリスケーリング(政府間関係・行政単位の再編)に関する研究
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20H01459
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
徳久 恭子 立命館大学, 法学部, 教授 (60440997)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 康史 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (00323238)
佐々木 幸寿 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (20432180)
待鳥 聡史 京都大学, 公共政策連携研究部, 教授 (40283709)
砂原 庸介 神戸大学, 法学研究科, 教授 (40549680)
市川 喜崇 同志社大学, 法学部, 教授 (60250966)
川上 泰彦 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (70436450)
本多 正人 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (90282623)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | リスケーリング / 分権化 / 再集権化 / 政治化 / 教育委員会 / コミュニティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,福祉国家再編期に政府間関係や行政単位の再編,すなわち「リスケーリング」が進んだ理由を把握することを目的とする。コロナ禍以前にたてた研究計画では,日独英米の4ヵ国の教育政策の比較を通じて,リスケーリングの実態と推進要因を明らかにすることを目的とした。しかしながら,2021年度においても海外調査は難しく,日本に限ってアンケート調査を実施した。 2020年度の都道府県教育委員会調査を受けて,2021年度は市町村教育委員会へのアンケート調査(悉皆調査)を実施し,47.0%の回答を得ることができた。本研究はリスケーリングを促す要因として,「分権化」「再集権化」「政治化」の三つがあると予想し,アンケートを作成した。すると,政治化(首長の影響力の増大)の影響が確認できた。その一方で,市町村教育委員会は都道府県教育委員会が自治体間,学校間格差を是正すると理解しており,良好な政府間関係の維持を期待することが明らかになった。すなわち,独自性の発揮を試みる首長は分離型を志向する一方で,教育委員会は融合型の政策形成を期待するというねじれがあることがわかった。 とはいえ,二者が対立するわけではない。教育政策における特定の規範がフォーカルポイントとなると予想されるが,この点を明らかにするのが2022年度の課題となる。 コロナ禍を受けた研究の見直しとして2020年に実施した,合併による行政区画の拡大(広域化)と地域自治区の導入よる区域の導入(狭域化)の影響をアンケート調査から明らかにする試みを2021年度も引き続き行った。上越市地域協議会委員を対象にした調査から,自治を促進すると予想された制度が参加を阻害することが明らかになった。中央政府の期待と異なる結果が生まれているのはなぜか。この問題の解明が2022年度以降の課題となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19による海外渡航制限のため,海外調査が実施出来ない状況にあることから「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は3つの研究の柱をおく。1つ目は,教育委員会教育事務所へのアンケート調査である。教育事務所は都道府県教育委員会の支所にあたるが,市町村教育委員会と都道府県教育委員会(本庁)を媒介するのみならず,所管内の学校間・市町村間の格差を是正する機能を果すと予想される。アンケート調査を通じてこの点を明らかにしたい。 2つ目は上越市への追加調査を行う。過去二年に実施した調査から分権を期待して導入した狭域での意思決定が再集権化を招く可能性が明らかになったからである。 3つ目は海外調査(イギリス調査)の可能性を模索する。模索と表現するのは,COVID-19に伴う制限がどのようになるかが定かでないためである。 本研究は担当制をとっているが,定期的な研究会を実施し,全体の統合を図りながら進めている。2022年度以降もその体制を継続させる。
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