2022 Fiscal Year Annual Research Report
Information acquisition and recommendation systems for consumption of experiential goods
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20H01478
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
石川 竜一郎 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (80345454)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 守 筑波大学, システム情報系, 名誉教授 (40114061)
秋山 英三 筑波大学, システム情報系, 教授 (40317300)
花木 伸行 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (70400611)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 経験財 / 効用比較可能性 / 限定合理性 / 進化ゲーム / 経験評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、(1)主体の経験財評価・効用に関する評価と、(2)各主体の経験評価と社会適応に関する研究をおこなった。前者については、金子が中心的に石川との共同研究として進めた。後者については主に秋山が進めた。さらに石川は、次年度の統合モデル完成に向けた経験財としてのサービス評価のスコアリングルールの設計と集約に関する研究を始めている。以下では、(1)と(2)について説明する。 (1)では、後向き帰納法における、利得の完全比較可能性、過去完全忘却で構成されている点を明らかにし、限定合理的主体の認知能力により利得が完全比較できないことを許容し、「慣性的行動」を導入することで、比較不可能な利得に直面した場合の行動を描写した。直接的にはムカデゲームパラドックスの解決として分析が進められたが、経験財評価の曖昧性を分析するための基礎理論が構築できたと考えられる。 (2)の社会における経験評価と社会適応に関しては、進化ゲーム的観点から過去の行動に基づく協力行動の進化のメカニズムを分析した。近年、裏切への懲罰、協力への報償が協力進化に果たす役割が注目されている。しかし、懲罰や報償は多くの場合コストを伴うため、適応度の観点から不利となる。一方、懲罰に関しては、Boyd et al. (2003)が、郡淘汰が生じうる集団ではコストが伴う利他的懲罰が進化しうるということを計算機シミュレーションにより示している。この研究を参考に、郡淘汰が発生しうる社会集団において、懲罰の他に、報償、および懲罰と報償の両方の存在が協力行動の進化に如何なる影響を与えるかを検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
経験財の効用評価に関する基礎理論が構築され、主体が将来消費を評価する際の曖昧さを表現できる枠組みの構築が可能になった。またマクロ的な側面から、社会全体を俯瞰したときの主体たちの経験評価が、社会全体へどのように波及するかの知見も得ることができた。これらを考慮しながら、ミクロ的な側面とマクロ的な側面を結びつける、経験財評価のメカニズムデザインを構築していくための準備が整ったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度において、集合知メカニズムの基本モデルを構築するために、メカニズムデザインのアプローチを援用した定式化を行う。抽象化した主体として、アイディアを提供するイノベーターと呼ばれる主体が、誘因両立的でかつ実行可能なアイディアを提供し、それらを集合知としてまとめ、イノベーション創出などの社会的なフィードバックを行える共創的メカニズムとして体系化する。これを用いて、具体的なフィールドでの検証を行う準備を立てている。 従来のメカニズムデザインと異なるのは、アイディアという無形なサービスをモデル化し、それを集約するメカニズムとしての集合知のデザインをおこなっている点にある。その定式化において、二つの異なる方法でアイディアを表現する。一つは、ホテリング流のロケーションモデルをアイディアの特徴の違いとして用い、多次元のホテリングモデルを通じた、制約付きアイディア提供問題としての表現。もう一つは数理議論学の手法を用いて、一つのアイディアを一つの命題と捉え、主体間の熟議を表現可能とする定式化である。 いずれにしてもそれらのイノベーターが提供するアイディアは、メカニズム設計者が集約し、サービス提供者の実現可能集合と消費者の満足度を考慮した上で提供される。このメカニズム設計者が用いるアイディア集約から提供までの各主体のインセンティブ統制をメカニズムを通じて行う。メカニズム設計者は複数のメカニズムを戦略として選択することができるが、この際にいずれのメカニズムが高い社会厚生を実現するかを検証する。その検証においては、理論的な帰結とシミュレーションやフィールド実験における結果とを比較することで、理論の頑健性についても論じる。
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