2021 Fiscal Year Annual Research Report
歴史的データを用いたファイナンス理論におけるパズルの解明
Project/Area Number |
20H01516
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山崎 尚志 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (30403223)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 秀徳 神戸大学, 経済経営研究所, 准教授 (90771668)
加藤 英明 名古屋大学, 経済学研究科, 名誉教授 (80177435)
加藤 隆太 広島大学, 人間社会科学研究科(社), 助教 (90906786)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コーポレート・ファイナンス / 資産価格理論 / 行動ファイナンス / アノマリー / 歴史的データ / 現金保有 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,戦前の株式市場の取引制度や企業を取り巻く経済環境,社会環境と現代のそれとの違いに焦点を当て,ファイナンス理論に基づいて推測される理論的帰結と現実との整合性をすり合わせることで,ファイナンス理論が提起する現代的な問いに答えることである。そのため,本研究では,1937年に国内資金使用を調整することを目的に施行された臨時資金調整法に焦点を当て,平和産業に代表される資金統制を強く受けた企業と,軍需産業に代表される資金統制を受けなかった企業が同法施行後にどのような財務行動をとったのかについて,特に近年活発に議論されている企業の現金保有に注目した分析を行うことを目標としている。 研究グループ間でミーティングを行ったところ,現在データベース化を進めている三菱経済研究所の『本邦事業成績分析』のみでは当時上場していた企業数を十分にカバーするには至らないとの意見が出たことから,さらに東洋経済新報社の『東洋経済株式会社年鑑』および野村商店調査部編『株式年鑑』からもデータを収集し,データベースをより充実させることを目指して研究を進めた。 パイロットテストを行うために収集したデータを取りまとめた結果,平和産業あるいは軍需産業に属する業種内の企業間差異を識別する必要があるとの知見を得た。具体的には,各企業の将来の成長性を測定するため,これまでの財務データに加えて株価データを取得する必要性が生じた。そこで,本年度では,上記のデータベースの拡張に加えて,1936年8月から1938年5月までの約2年分の主要上場企業の株価日次データを大阪朝日新聞の紙面より取得し,データベースの拡充を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究課題が採択されて以降,新型コロナウィルスの影響で,当初データ入力を依頼する予定であった技術補佐員を雇用できなかった期間が長く続いたことにより,分析データの取得に想定外の遅れが生じている。昨年度同様,本年度もデータ入力業務の大部分をデータ入力代行業者に依頼することでカバーしているものの,遅れを完全に取り戻すには至っていない。 さらに,財務データベースの拡張に伴い,新たに取得した東洋経済新報社『東洋経済株式会社年鑑』および野村商店調査部編『株式年鑑』では,企業が公表した項目をそのまま掲載していることから,企業間の財務項目の調整・統一作業に多くの時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの影響によって研究期間がずれ込んでいる現状に伴い,引き続きデータベースの整備を行ったうえで,戦前期の株式・財務データを基に,ファイナンス理論における種々のパズルの要因を解明するための実証分析を行っていく。 資産価格理論における分析では,戦前期の日次株価データを用いて,臨時資金調整法公布時の株価反応をイベントスタディにより分析する。その中で,臨時資金調整法が資産価格に及ぼす影響を測定するとともに,資産価格における戦前期の日本株式市場の効率性についても検証を行う。 コーポレート・ファイナンスにおける分析では,臨時資金調整法施行後に,平和産業に代表される資金統制を強く受けた企業と,軍需産業に代表される資金統制を受けなかった企業がどのような財務行動をとったのかについて,特に近年活発に議論されている企業の現金保有行動に注目した分析を行う。 また,今後データ整備に想定外の遅れが生じた場合,現在データの整備がほぼ完了している三菱経済研究所の『本邦事業成績分析』を中心に分析を行うように方針を修正する。
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