2020 Fiscal Year Annual Research Report
International transfer of railway managements in the Imperial Japan:Focusing on the business administration and the human resource management
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20H01521
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 尚史 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (60262086)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 采成 立教大学, 経済学部, 教授 (40760228)
澤井 実 南山大学, 経営学部, 教授 (90162536)
ばん澤 歩 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (90238238)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 帝国圏鉄道 / 日本国鉄 / 南満州鉄道 / 吉敦鉄道 / 朝鮮総督府鉄道局 / 台湾総督府鉄道部 / 東西ドイツ国鉄 / 経営システム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、帝国日本における鉄道経営システムの発展の過程を、国際比較と国際関係という2つの研究視角から考察することにある。ただ本年度は、コロナ禍によって海外調査などが制約されたこともあり、この共通のテーマを掲げつつ、基本的には参加者各自が個別に調査・研究をすすめた。その上で、年間3回、オンラインによる集中研究会を開催し、研究進捗状況の相互確認を行った。 今年度の研究成果は以下の通りである。研究代表者・中村は、帝国圏鉄道のプロトタイプとなる日本国鉄や五大私鉄の鉄道経営システムについて、主として組織と人的資源形成の面から考察した。 研究分担者・沢井はまず南満洲鉄道の借款鉄道の一つである吉敦鉄道の建設過程に関する研究をすすめ、日中間の「技術移転」の具体的様相を検討した。その上で朝鮮総督府鉄道局の工作課、鉄道工場の幹部職員・技術者、各機関区長・保線区長、鉄道従事員養成所の動向を検討した。 研究分担者・林は日本の植民地政策が英仏の自治主義や統合主義と異なり、日本人の移住を前提とする定住型統合主義であったことに着目し、日本帝国圏鉄道における人的資源管理の比較分析を試みた。具体的には植民地雇用構造における労働賃金、採用・昇格、教育、生産性に関する数量分析を行い、エスニック的な経済不平等という論点を提示した。 研究分担者・ばん澤は、専攻するドイツ鉄道史研究において、観察対象としてカバーする範囲をより現代(20世紀後半)まで広げる研究をおこなった。そして東西ドイツ国鉄の比較史的観察を通して、20世紀後半の異なる経済システム間の鉄道業では、継承する企業文化の一致にも関わらず、その後の経営動態に顕著な相違が出た事実を改めて整理分析することができた。 台湾在住の研究協力者・蔡は、コロナ禍の影響で資料収集が難航したが、台湾に所在する台湾総督府鉄道部の共済関係資料の収集をすすめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍の影響で海外渡航が事実上不可能になったため、当初予定していた海外資料調査や国際会議が実施できなくなった。 ただし、本研究は当初から、参加研究者の自主性を活かした研究推進体制を採用していたため、各人が国内資料・文献の精査や、研究成果の対外発信の準備などを自律的に実施することが可能になった。さらにメンバー全員が研究の進捗状況を研究発表という形で報告し合う集中研究会(2日間)を、6月、9月、2月と年3回、オンラインで開催することにより、問題意識の摺り合わせや、論点の整理を行った。この会合には、毎回、台湾の研究協力者(蔡龍保氏)も参加していただけたことから、期せずして濃密な研究活動を遂行することができた。 その結果、年度当初に危惧したよりは順調に研究が進展したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の1つの狙いは、東アジア地域における鉄道発展の過程を、国際比較と国際関係という2つの視角から明らかにすることにある。この2つの研究視角にとって、海外での資料調査・研究は必要不可欠であることから、昨年度、コロナ禍でその活動が著しく制限されたことは、研究活動を進める上で大きな制約要因となった。この状況は、少なくともあと半年は続くと思われることから、今年度前半は昨年度同様に国内史資料・文献の調査を軸に研究を進めていく必要があると思われる。その一方で、年度後半に、コロナ禍が改善した場合、速やかに海外資料調査に取りかかれるよう、事前準備を綿密に行って行きたい。 また本研究のもう一つの狙いである、帝国圏鉄道を素材とした東アジアや欧米の研究者とのネットワーク形成についても、コロナ禍の状況を見ながら、少しずつ準備を進めていきたい。時差の関係で遠方の地域とのオンライン会議には困難を伴うが、一方で移動コストが節減できるというメリットもある。この利点を活かしつつ、国際会議の準備などを進めていきたい。
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Research Products
(10 results)