2020 Fiscal Year Annual Research Report
Peasant Economy in Monsoon Asia: A Regional Environmental History of Japanese Industrialization
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20H01523
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
村山 聡 香川大学, 教育学部, 名誉教授 (60210069)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東 昇 京都府立大学, 文学部, 准教授 (00416562)
服部 亜由未 愛知県立大学, 日本文化学部, 准教授 (70708370)
寺尾 徹 香川大学, 教育学部, 教授 (30303910)
石塚 正秀 香川大学, 創造工学部, 教授 (50324992)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 小農経済 / 有機経済 / 環境史的地域研究 / 化石燃料消費社会 / 再生可能エネルギー社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
近世近代日本においていかに小農経済は生き延びることができたのか、そして、いかに明治以降の国家は小農経済の生き残りに決定的なダメージを与えたのか。これらの問いに答えることを目的として、小農経済の衰退の根本原因は産業革命期における地域把握の決定的な転換にあるのではないかという仮説を立てている。その仮説検証のため、2020年度は、 1.近世近代の京都府加佐郡関連資料のデジタル化と文書調査を進め、特に山林資源に関わる内容についての研究成果を公開し、個別の分析も開始した。 2.さらに、皇国地誌(郡村誌)等を中核に近世から大正までの長期の環境史的比較研究を遂行する上でことが本研究の目的であり、とりわけ、生態環境あるいは気候変動や気象変化を含めた環境史的問いに対して、自然科学的方法に基づく実証的知見に基づき回答を与えることを課題にしている。例えば、郡単位レベルでの大洪水や旱魃などの生起確率を含む長期の気象変化及び水文学的変化を実証的に歴史分析に組み込むことにある。そこで、降雨流出氾濫モデルを用いた由良川流域における河川流出シミュレーションの暫定的な分析を進め、モンスーンアジアの水文気候条件の郡スケール変動の実証分析を組み込むための水文気候データの活用方法の検討を行い、データサーバへの過去の水文気候条件の変動に関するデータの蓄積を進めた。 3.また、Jupyterというウェブベースのインタラクティブな環境の上に、気候データを含む地球科学的ビッグデータの取り扱いに特化したツールを統合したPangeoというプラットフォームに依拠し、共同研究者が全てシームレスに参画できる構造を構築した。 4.それと並行して、旧版地形図をもとに土地利用GISデータの作成を開始し、特に加佐郡大江町河守地区における地形の把握を進め、GIS分析との連動を開始できるまでの準備を完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下、1.歴史資料収集、2.水文気候学的分析、3.GIS分析、そして、4.比較環境史的分析のそれぞれにおいて予定通り研究が進展しており、総合的におおむね順調に進展していると判断できる。 1.歴史資料収集とデジタル化は順調に進展している。本研究の中核となる郡村誌系資料に加えて、男女の労働の季節変化を把握できる「作方年中行事」関連の史料群は極めて重要であり、その体系的収集は現在進行形であり本年度も継続する。ただ、ほぼ加佐郡全域の残存状況は確定しているため、おおむね順調に進展している。 2.水文気候学的分析に関しては、徐々に利用できるデータの整理と蓄積を進めているが、初年度はまずデータ分析上の機器の設置と共同研究者が協働的に利用できる環境が整備された。そして、水文気候学的分析そのものについても、これまでの歴史研究では到達できないレベルでのシミュレーション分析など、まだ暫定的とはいえ、すでに今後の文理協働的な分析可能性が明らからにされたこともあり、この点もおおむね順調に進展している。 3.また、GIS分析に関しても、特に加佐郡の旧版地形図(15枚、明治26年測量)を国土地理院に謄本申請し、デジタル画像データを発注作成し、さらにGIS上で位置情報付与を済ませ、旧版地形図をもとに土地利用GISデータの作成している。予定通りの進展であり、この点もおおむね順調に進展している。 4.本研究の重要な論点である郡村誌系資料に関する19世紀初頭の江戸後期から明治期そして大正期の三つの時期に関する比較については、個々にデジタル化を進めている現状であり、まだ本格的な比較分析はできていない。ただ、歴史資料分析を進めてきた結果として、三者比較に関する重要な論点整理ができてきたこともあり、この点もおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、Peasant Economy in Monsoon Asiaという英語の研究タイトルの頭文字からPEiMAという研究会を9回開催し、異分野の研究者間での有機的連携を深め、研究実績を蓄積した。 1.今年度も少なくとも2ヶ月に一度の研究会を開催し、それぞれの研究成果を持ち寄り、協働での論文執筆等を進める。特に本年度は、東アジア環境史協会(AEAEH)が主催する国際学会が開催されることに伴い、その学会での報告に照準を合わせて、研究成果を広く討議できる機会を設け、更なる研究の充実を追求する。また、水文気候学関連の自然科学系の学会においても、随時研究成果を公表していく。 2.総合的な研究課題としては、地域を総体として把握できる歴史資料として、文化3年(1806)頃に作成された「田辺藩土目録」、明治15年(1881)頃の「京都府地誌 加佐郡村誌」そして大正14年(1925)『加佐郡誌』の三者をいかに比較分析するかが肝要である。理論的な方法論の展開とデジタル化とGIS化を進め、自然科学系データと接合する。 3.初年度の研究成果より、近世社会における小農経済に関しては、中世社会に淵源を持つ多様な連続性の中で理解する必要性が明らかになった。この長期的な視野は、過去へ遡るだけでなく、例えば、近現代の変容として急激に広がる桑畑などの農業生産における変化など、数百年以上の長期の環境史的な地域研究を想定する必要がある。この点はむしろ水文気候学的な自然科学的データとの相性も良く、文理協働の歴史研究をさらに推進することができる。 4.オリジナルな歴史資料分析、叙述資料の数量化、地図化、そして、水文気候学的データの蓄積はそれぞれ研究分担者が個々に担当し、それぞれの研究成果を多様に接合・深化させていく目的で、上記のPEiMA研究会、個々の専門分野における学会発表を継続していく予定である。
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Research Products
(5 results)