2021 Fiscal Year Annual Research Report
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20H01565
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
室井 研二 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (20310013)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒田 由彦 椙山女学園大学, 文化情報学部, 教授 (30170137)
高橋 誠 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (30222087)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生活構造 / 移転 / 復興格差 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度の最大の成果はサーベイ調査を実施できたことである。研究分担者と検討を重ねて調査票を完成させた後、調査対象地である宮城県南三陸町、女川町、山元町に選挙人名簿の閲覧申請を行い、夏季休業期間に各自治体の選挙管理委員会で調査対象者のサンプリング(南三陸1000人,女川800人,山元1000人)を行った。10月~11月の期間に自記式、郵送法で調査を実施し、計1234票の回答を得た(回答不能表、不着票を除いた有効回収率45.9%)。 回収票のデータチェックを行った後、調査会社にデータ入力を依頼し、年末にデータセットを入手した。年明けからデータの分析に入り、単純集計結果の自治体間比較をとりまとめた速報版の報告書を刊行した。回答者のうち約200名から報告書の希望があり、約70名からヒアリング調査への協力が得られた。そこで報告書を郵送するとともに、春期休業期間に女川町と南三陸町で計2回ヒアリング調査を実施した。 サーベイ調査で得られた主な知見は以下のようなものである。全体として、震災後に世帯が顕著に縮小し(特に多世代同居世帯の減少)、コミュニティの分解が進んだ。自治体別にみると、南三陸町は土着的な地域的つながりが最も豊かであるが、生活環境条件(特に公共交通、買物の便)が著しく悪化した。女川町は公共サービスは比較的維持されているが、世帯の縮小や地域活動の停滞が最も著しく、中心部と浜の復興格差が大きい。山元町は住民の生活構造が流動的であるが、生活環境条件に関しては震災前よりもむしろ改善した(特に公共交通、買物の便)。これらの知見は3月の震災問題研究会で速報的に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最大の課題であったサーベイ調査を3つの調査対象地すべてで無事に実施することができ、かつ予想よりも高い回収率を得ることができた。報告書の送付という形で、調査結果を地元に還元することができた。ヒアリング調査に関しても予想以上に多くの方から協力が得られ、今後の調査の見通しを得ることができた。以上のことから、概ね順調に進捗していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
・サーベイ調査の結果については基本的な分析を済ませたばかりの段階なので、より詳細な分析を行い、震災復興条件不利地域の全体的な特徴と自治体間の差異を計量的な観点から明確化する。 ・サーベイ調査の回答者に対してヒアリング調査を実施する。ヒアリング調査では、調査対象者にサーベイ調査の結果の概要を伝えると同時に、数量的な調査結果の実情や背景について尋ねる。また、ヒアリングデータの裏付けになる各種統計データや政策資料等を収集し、量的調査結果の質的検証を深める。これらの作業は研究代表者が主導する形で行うが、現地でのヒアリング調査は可能な限り研究分担者と同行し、調査の結果について定期的に議論、検討を重ねる。また、必要に応じて研究協力者も交えた研究会を現地視察もかねて実施する。 ・以上の調査研究の成果を学会で報告し、論文としてまとめる。
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Research Products
(12 results)