2022 Fiscal Year Annual Research Report
社会シミュレーションにおけるビッグデータに頼らないモデリング方法の研究
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20H01571
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
石野 洋子 山口大学, 大学院技術経営研究科, 教授 (90373266)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 真吾 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20216724)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 社会シミュレーション / ゲーミング / ベイジアンネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
現代,人類社会が直面する課題の多くは,多様な意思を持つ人間同士が相互作用することで予期せぬ結果を生む複雑系に創発する現象といえる.この種の現象解析には,エージェントベース・モデリング(ABM)を用いた社会シミュレーションが有用である.この方法は,現象をモデル化・可視化し,そのダイナミズムを読み解くことを可能にするが,「現実のどの部分を抽象化してモデルを構築すべきか」という基幹部分が定式化されておらず,信頼性を疑問視する声もある.そこで本研究は,質的なデータと量的なデータを繋ぐ新たな手法を開発し,マーケティング分野(新型コロナウイルス感染症の影響で医療・介護分野から変更)や教育分野における実際の問題で検証を行うことが目的である. R3年度は,協調して問題解決の筋道の共有を行うグループ学習のタスクを取り上げ,ゲーミングを企画・設計して,実際に大学生を対象者として予備実験を行った.その結果,当初想定していた実験内容では被験者の意思決定の変化や他者との協調を検出することができないことが判明した.そこで,ゲーミングの内容を再検討した上で,文献調査を行い,小規模な人数での検証実験からやり直し,検証結果の解析を追加したうえで,大規模な被験者に対する実験をすることにした.その結果,「まちづくり」をテーマにし,施策を評価する際に設定された条件のもとで実際に被験者に行為選択を行わせ,その結果を分析するゲーミング・シミュレーション(GS)を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響により,開始当初予定していた調査(医師への深層インタビュー)の実施が困難になり,対象分野を医療や介護から一般的なマーケティングに変更したが,市民ランナーを対象にした調査を実施して,一定の研究成果を出した.また,教育分野では「まちづくり」をテーマにしてゲーミング・シミュレーションを実施し,興味深い研究結果を得た.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年に実施した「市民ランナーの行動」に関するインターネット・アンケート調査を因果推論と機械学習を組み合わせて分析したところ,ランナーのランニングイベントに関する行動変容がウェアラブルデバイスの購入に与える影響を明らかにすることができたが,顧客生涯価値(Life Time Value,以下LTV)との関係は不明なままであった.LTVは現代のマーケティングでは非常に重視されている指標である.なぜなら,現代は新規顧客を創出することが難しくなっているといわれ,ビジネスを中長期的に存続させるためには,既存顧客との関係を深めるための取組が欠かせないからである.LTVはそれを測る良い指標である.LTVを上げるためには,長期的に消費者を巻き込み,消費者の自発的な行動変容をマーケティングに組み込んでいく必要がある.そこで,時間軸上に複数回生じる行動変容がLTVにどのように影響するかを商品群ごとに明らかにできるように設計をしたアンケートを実施する予定である. また一方,教育の分野では,まちづくりのゲーミング・シミュレーションを用いた実験を繰り返し,住民の納得性を高めるためにはどのようにすべきかという分析を試みる.
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Research Products
(10 results)