2021 Fiscal Year Annual Research Report
基礎自治体における子どもの貧困対策の現状と課題に関する総合的研究
Project/Area Number |
20H01610
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Research Institution | Okinawa University |
Principal Investigator |
山野 良一 沖縄大学, 人文学部, 教授 (50618600)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川松 亮 明星大学, 人文学部, 教授 (20848816)
鳫 咲子 跡見学園女子大学, マネジメント学部, 教授 (50644473)
島村 聡 沖縄大学, 人文学部, 教授 (90713082)
鈴木 崇之 東洋大学, ライフデザイン学部, 教授 (40343678)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 貧困 / 自治体 / 専任職員 / コロナ禍 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、子どもの貧困対策において、先進的な取り組みをしている自治体の状況(課題などを含む)、基礎自治体における対策の進展(停滞)や各都道府県の市町村支援の状況などを把握し、これらを共有することで、現在の基礎自治体を主とした子どもの貧困対策の全般的な向上に寄与することを目指すことである。 そのために、①子どもの貧困対策を推進していると思われる複数の基礎自治体関係者を直接訪問し、ヒアリングを実施することによって、施策のあり方、取り組みの工夫点を把握すること、②調査期間中における、都道府県及び政令市の子どもの貧困対策についての進捗状況および管内基礎自治体における子どもの貧困対策の拡がり(または停滞)および基礎自治体の対策の状況を確認するために、都道府県・政令市担当部門あてへのアンケート調査を行うこととしていた。 ①については、コロナ禍が2021年度も深刻であったことから本格的な実施できず、2022年になってコロナ禍が収まるまで待たざるを得なかった。 ②については、「都道府県・政令市子どもの貧困対策計画等についてのアンケート調査報告書」としてまとめ調査対象自治体に送付した。 ②の結果として主な点としては、(1)「子どもの貧困対策のための専門部署」を置いているのは、都道府県の2.9%、政令市の11.8%に留まっていた。(2)都道府県・政令市独自の取り組みについては、子ども食堂や居場所づくりの支援に関連するものが多かった。(3)都道府県に尋ねた、管内自治体の子どもの貧困に関する計画策定割合については、ほとんどの自治体が策定(および見込み)であると回答するところもあったが、一部の都道府県ではかなり少ない傾向があり、都道府県ごとで格差や偏差が顕著であることが見える結果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
主な研究方法として当初考えていた、①基礎自治体職員に対する訪問インタビューについては、繰り返される緊急事態宣言の発出と、主任および分担研究者の所属方針および調査対象となる自治体の方針との兼ね合いから、2022年度まで延期せざるを得なかった。調査方法等の理解を得て、実際のアポイントを取るところまでいった自治体もあっただけに残念であった。 そうしたなかではあるが、zoomで月1回ペースで研究者間で研究会を実施し、調査の方向性の検討等を進めてきた。 一方、①を補うためにも、②2020年度実施した都道府県・政令市担当部門あてへのアンケート調査については、主任分担研究者で役割を分担し分析を行い報告書を発行し、調査対象者に送付し、本研究のHPにも掲載している。 また、①を2022年度以降進めていくためにも、③本年度は基礎自治体の貧困対策について知見があると思われるステークホルダーに対して、zoomなどを用いてヒアリングを行ってきた。 さらに、コロナ禍における子どもたちへの社会的影響について、研究代表者を中心として新聞社(全国紙・地方紙)などとの協力のもとにアンケート調査を行い公表している。あわせて、コロナ禍において経済的に困窮状況にある子どもや家族に対する支援を行っている自治体に対してヒアリングを行ったが、平時の子どもの貧困対策は、コロナ禍のような緊急時に非常に役立つことが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、本格的に①基礎自治体に対するヒアリングを行っていく。コロナ禍が再度深刻となった場合には、zoom等の活用を考える。 また、②2020年度に実施した、都道府県・政令市を対象としたアンケート調査からは、子ども食堂等に対する支援など一定程度対策を(基礎自治体を含め)自治体では開始しているが、支援方法は画一的な印象があり、特に教育と福祉の縦割りの弊害が見られ、支援のはざまを埋める支援やアウトリーチ等には至っていないことが分かった。 さらに、③①が実施できないために行った、ステークホルダーに対するzoomによるヒアリングからは、子ども貧困に対する支援体制と実践は、コロナ禍もあってここ数年あまり進展がみられず、人材や社会資源の質量に左右されている現状が可視化された。 そこで、今後は基礎自治体における行政機関(役所・児童相談所等)だけでなく、準公的機関でもあり、行政機関サービスのはざまを埋めることを大きな役割とする、基礎自治体の社会福祉協議会における、子どもの貧困対策(または広く子ども福祉支援)の状況を探ることも調査研究の目的のひとつとすることとした。特に、社会福祉協議会は重層的支援体制整備事業の重要な担い手でもあり社会的にもホットな話題になると思われた。 よって、2022年度は、子どもの貧困対策を推進していると思われる複数の基礎自治体関係者を直接訪問し、ヒアリングを実施することによって、施策のあり方、取り組みの工夫点を把握することを目指すとともに、一方で子ども施策を進めている基礎自治体の社会福祉協議会を訪問しヒアリング調査を行い、先進的な取り組み状況および、行政機関との連携状況等も把握する。さらに、重層的支援体制整備事業を実施している基礎自治体の社会福祉協議会を対象としてアンケート調査を行うこととする。
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Research Products
(22 results)