2020 Fiscal Year Annual Research Report
不登校経験者が通う“新しいタイプの高校”での教育と支援-3つの移行と教師の変容
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20H01679
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
伊藤 美奈子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (20278310)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相馬 誠一 東京家政大学, 人文学部, 教授 (20299861)
新井 肇 関西外国語大学, 外国語学部, 教授 (60432580)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 不登校 / 高等学校 / オンライン / コロナ禍 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、不登校生徒が多く通う広域通信制高校に焦点づけて、いくつかの調査を行ってきた。その結果、不登校生徒の“その後”、高校での支援の実態が明らかになった。本研究では、さらにその対象を広げ、現代の高校が抱える課題にも言及しつつ、全入時代の高校(進学校の対極にある新しいタイプの高校)に求められる教育や支援の意味について明らかにする。それと同時に高校を取り巻く“移行”や“節目”に着目し、他校種とのつなぎや転学という仕組みについても、その現状と課題について俎上に挙げるという目的で行う予定であった。しかし、長引くコロナによる休校や分散登校、さらにはオンライン対応などにより、当初の研究目的が果たせずにいた。しかし、この状況でしか調査できないこともあると考え、通信型通信制高校での学校生活満足感の調査と並行して、新しいタイプの高校の一つでもあるネットを活用した教育の成果と課題についても明らかにするための調査を、急遽加えて行うこととなった(前者については、日本心理臨床学会において「通学型通信制高校における学校生活満足度の変化」松下・森下・伊藤で報告。後者については、日本青年心理学会研究委員会企画シンポジウムにて「コロナ禍と学校現場-不登校に焦点づけて」伊藤が報告)。また、大学との比較から高校生について考察する目的で、コロナ禍での大学生のストレスや孤独感との比較も調査し、紀要論文「コロナ禍3年目を迎えた大学生のストレスと孤独感」(伊藤・栗本)にまとめた。以上、当初の予定とは違ったが、新しい高校の一つの形でもあるオンライン教育の光と影、そして校種の“節目”や“移行期”の重要性と意味を考える材料とできた。これらの成果については、編著書「不登校の理解と支援のためのハンドブック」(ミネルヴァ書房)にまとめ、刊行することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記のように、申請当初の目的は十分に果たせず、科研研究としては遅れているのが実態と言えるが、このコロナ禍であることを逆手に取り、新しいタイプの高校の特色の一つでもあるオンライン教育にも触れることができたのは幸いであった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は、上記のように、研究としては予定通りには進まなかったが、その成果を著書(ミネルヴァ書房「不登校の理解と支援のためのハンドブック-多様な学びの場を保障するために-」)にまとめたが、今後は、ポストコロナの新しいタイプの高校を調査対象とする。その際、新しいタイプの高校に求められることの多い「高校に通う」「高校を卒業する」「社会で生きているための基礎力をつける」ことに注目する。新しいタイプの高校では、基礎学力からの学び直しを重視し、教材やクラス編成も工夫が必要とされる。その一方で、多様なニーズを持つ生徒が入学してくる新しいタイプの高校に、より必要とされるのが“支援の軸”である。「レジリエンス」「自己肯定感」「粘り強さ」「挑戦する力」など学力では測れない非認知能力を身につけるための取り組みを充実させる高校も増えている。ソーシャルスキルトレーニングやアサーショントレーニングなどの心理教育を教育課程に組み込んだり、アクティブラーニングやユニバーサルデザイン教育を掲げるなど、生徒たちの「生きる力」を伸ばそうという取り組みもある。さらに、中退や転学などを水際で堰き止めるために、別室登校や校内カフェ(居場所作り)、支援員の配置を進める学校も増えている。今後は、そういう多様な高校を対象にした調査を行うとともに、それらの教育の意味について、論文や著書としてまとめる方向を目指す。
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Research Products
(8 results)