2023 Fiscal Year Annual Research Report
統計的犠牲情報と個人的犠牲情報の複合効果:リスク情報提供の枠組みづくりに向けて
Project/Area Number |
20H01756
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
中谷内 一也 同志社大学, 心理学部, 教授 (50212105)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | リスク認知 / リスクコミュニケーション / 事例情報 / 統計情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
リスク対策、具体的には緊急地震速報を材料とし、その有効性認知に及ぼす「事例+統計」情報の影響力を検討した。具体的には、特定の事例情報によって形成された有効性認知が後続する統計情報によって修正されうるのか、という問題を検証した。方法としては、双方向性のある講習会形式で実験を実施し、参加者の反応を測定した。 講習会では緊急地震速報のしくみを解説した上で、ある特定住民が緊急地震速報によって適切に防護行動を行えた事例を紹介するポジティブ事例情報、逆に、速報を受信してもある住民が何の防護行動も行えなかったというネガティブ事例情報、さらに、住民調査の結果として対象住民3000人のうち何人が防護行動をとったのかを示す統計情報、を組み合わせて参加者に提示し、従属変数として有効性評価やリスク政策支持、行動意図への影響を検証した。 結果は事例を通じて緊急地震速報の有効性(あるいは非有効性)が示唆された場合、ベースラインの有効性評価を有意に変化させたが、その後に統計情報を与えても有効性評価は変化しなかった。逆に、先に緊急地震速報の有効性についての統計情報を提示し、その後に事例情報を提示すると、先に形成された有効性認知は事例情報の方向性に応じて有意に変化した。つまり、事例情報はリスク対策の有効性評価に影響するが、統計情報はほとんど影響力を持たないことが明らかにされた。 リスクコミュニケーションの基本理念は、情報環境を整え、個人に対して適切にリスク情報を伝えて、well-informed decisionを促す、というものである。そして、リスクとは望ましくない状態が生じる可能性やその深刻さを定量的に表現するものである。事例の影響力が強く、定量的な統計情報を提示してもリスク削減の主観的評価には影響しなかったという本研究の成果は、ナイーブなリスクガバナンスの困難さを示唆するものと言えよう。
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Research Progress Status |
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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