2021 Fiscal Year Annual Research Report
過敏性腸症候群を不安モデル症例とした新しい注意バイアス修正法の開発
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20H01779
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
河原 純一郎 北海道大学, 文学研究院, 教授 (30322241)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田山 淳 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (10468324)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 注意バイアス |
Outline of Annual Research Achievements |
日常生活で身近に存在する物体の空間的位置は人間の知覚や認識に影響を与える。本研究では,過敏性腸症候群の傾向をもつ者の注意バイアスを測定することを目的とした。注意バイアスを測定する典型的な手続きでは,脅威となる語や画像を,中立語や画像と対にしてコンピュータ画面上に呈示し,その直後に注意が向いていることを確認するためのプローブと置き換える。そしてプローブが脅威刺激位置か,中立刺激位置かでプローブへの反応時間を比較する。もし注意が脅威刺激に向いているのであれば,反応時間は脅威刺激位置にあったプローブに対してのほうが短いはずである。このような手続きをと平行して,自由観察課題でこれらの対にした刺激への視線停留を測定した。その結果,上方に置かれた刺激への視線移動と停留が,下方の刺激に対してよりも多かったことがわかった。ここから発展して,この上方優位の効果が経験によるものなのか,生得的な神経回路によるものなのかは依然として不明であった。この問題を解決するために,本研究では上方の視野にある顔は下方の視野に比べて優先的に処理されるという、顔処理に関する視野非対称性の発達を検討した。その結果,6ヶ月から7ヶ月の間に発達的な変化が起こることがわかった。7-8か月児では成人と同様に上方視野の顔への偏りが見られた。しかし,5-6か月児ではそのような視野の偏りが見られなかった。加えて,5-6か月児は下視野よりも上視野の顔を優先的に記憶していた。これらの結果は、視野の非対称性は発達を通じて獲得されるものであり、日常経験における空間位置の学習が原因である可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過敏性腸症候群該当者へのアクセスは制限されており,十分な数の参加者は得られていないが,一方で注意バイアススコアを測定する課題を実施中に発見した上方の刺激への視線停留バイアス研究が派生し,こちらは予想を超えた頑健なデータとなっている。引き続きこれらの実験課題で予定した計画に基づく実験を遂行してゆく。
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Strategy for Future Research Activity |
上方の刺激への視線停留バイアスは非常に頑健に得られるため,さまざまな実験条件でこのバイアスが生じる原因を探る。斜めに呈示した場合にバイアスが消えることが分かってきたが,依然としてそれを裏付けるメカニズムの特定には到っていない。このメカニズムの特定を狙った実験デザインを考案したい。
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Research Products
(2 results)