2020 Fiscal Year Annual Research Report
Evolution equations describing non-standard irreversible processes --Analysis on singularities emerging in the dynamics of solutions--
Project/Area Number |
20H01812
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
赤木 剛朗 東北大学, 理学研究科, 教授 (60360202)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 正人 金沢大学, 数物科学系, 教授 (70263358)
梶木屋 龍治 佐賀大学, 理工学部, 教授 (10183261)
上田 好寛 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (50534856)
藤江 健太郎 東北大学, 数理科学連携研究センター, 准教授 (50805398)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 発展方程式 / 非線形・非局所 / 不可逆過程 / 破壊・損傷力学モデル / 距離空間上の勾配系の摂動理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度の研究実績について説明する。(番号は交付申請書の研究目的で挙げた課題に対応する。) 1.破壊力学等に現れる強い不可逆性を有する散逸系の研究 強い不可逆性を拘束条件に持つAllen-Cahn方程式の進行波とその安定性に関する研究を行った。この問題では進行波解が退化し、1パラメータ族を構成することが明らかになった。さらに進行波解の安定性解析に向けてエネルギー法や比較函数を用いた方法について検討を進めた。古典的なAllen-Cahn方程式とは状況が大きく異なるため、既存の研究で用いられた手法は適用できず、大幅な改造が必要になることも明らかになった。この課題は中村健一氏(金沢大)とChristian Kuehn氏(ミュンヘン工科大)との共同研究として行う。また完全破壊モデル(フルモデル)の適切性について検討を進め、特に時間局所適切性を証明する手順について検討を進めた。この課題はGiulio Schimperna氏(パヴィア大学)との共同研究として行う。 3.距離空間上の勾配流に対する摂動理論とその応用 ‐部分的勾配構造‐ 変動指数を伴う非線形偏微分方程式を扱う際、既存の理論では変動指数の特性を捉えることが困難であり、常に結果にロスが生じてしまう。ここでは変動指数を伴う2種の二重非線形発展方程式(非線形拡散方程式およびフェーズフィールド方程式)を考え、特有の距離構造を備えた勾配流理論を展開することで解の存在に関する最適な結果を目指す。前者は田中直樹氏(静岡大)、後者はSchimperna氏との共同研究として実施する。 4.非線形拡散方程式に対する解挙動の定量解析 フィンスラー構造を伴う拡散方程式を考え、遠方で増大する初期値に対する解の存在について石毛和弘氏(東大)と佐藤龍一氏(福岡大)との共同研究による論文を発表した。一方、多孔質媒体方程式に対応する問題について検討を開始した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究分担者や協力者の助力により問題点の解決が予想以上に進んだ。新型コロナの問題もあり成果発表のための海外出張や海外の研究協力者の招聘は実現しなかったものもあるが、研究打ち合わせに関してはオンラインツールを利用することで順調に進んだ。一方、課題をより明確にするためにブレインストーミング型の議論が必要なものに関しては対面による研究打ち合わせが不可欠であることも明らかになった。それらは新型コロナの状況が改善するまで保留されていたが、延期した研究期間中に無事実施することができ、予定されていた打ち合わせはすべて完了した。
|
Strategy for Future Research Activity |
1に関しては進行波解に関するさまざまな情報が分かるようになったが、安定性解析に関しては困難が立ちはだかっている。今後、それらの解決に向けて取り組む。Fife-McLeodやX.Chenによる古典的なAllen-Cahn方程式の進行波解の指数安定性の証明法はここで扱う問題に適用できない。ここで扱う問題の背後にある障害物問題としての特徴に着目することが問題解決の緒になると考えられる。引き続き中村氏、Kuehn氏と協働する。 2に関しては予定通り次年度に検討を行う。 3に関しては問題に応じた函数空間や距離構造の選定に関して大きな進展があった。今後はそれらに基づき、勾配流理論や作用素論における道具立てを整備することで、変動指数に最適な結果を引き出すことのできる理論的枠組みを構築する。その検証のために今後、解の存在に関する十分条件を導出する。 4に関してはフィンスラーラプラシアンの変分的特徴づけや局所エネルギー評価の方法に関する知見を得た。多孔質媒体方程式などの非線形拡散方程式に対応する問題はいわゆる二重非線形放物型方程式となるため、同手法を適用するときに近似解の弱極限の特定に関して深刻な問題が生じる。それらを解決するためにMintyの方法などの函数解析的手法が有効であることは広く知られているが、ここで併用するような局所化法とは相性が悪く、そのままでは適用ができない。ここではまず、Mintyの方法と局所化法を融合させる理論的枠組みについて見通しを立てるところからはじめ、問題の解決を目指す。また同方程式に対する局所エネルギー評価はすでにp-Laplacian型の二重非線形放物型方程式に適用された手法を参考にすることで可能だが、既存の文献では詳細が省略されていたり、読解が困難なものもある。ここでは詳細を十分に検証するためにそれらを慎重に見直し、さらにそれらをより見通しの良い形でまとめ直す。
|