2020 Fiscal Year Annual Research Report
Superconductivity parity and magnetic frustration near quantum critical point of chiral symmetry structure
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20H01848
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
岩佐 和晃 茨城大学, フロンティア応用原子科学研究センター, 教授 (00275009)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑原 慶太郎 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 教授 (90315747)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | カイラル対称 / 超伝導パリティ / 量子スピン液体 / 磁気フラストレーション / 量子ビーム |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) カイラル・非反転結晶構造への相転移が絶対零度に抑制された量子臨界点でのトポロジカル物性現象の追究を推進した。 ・カイラル量子臨界点近傍での超伝導パリティの混成と奇パリティ増強が理論的に提案されているが、その検証物質が存在することを検証するため、La3(Co1-xRux)4Sn13のxに対するカイラル構造相転移温度と超伝導転移温度を決定した。x = 0.2近傍でカイラル構造相転移は消失し、x = 0.6近傍で超伝導転移温度が増加することが見いだされた。 ・さらにLa3(Rh1-xRux)4Sn13ではx = 0.45近傍にカイラル構造量子臨界点があり、その近傍で超伝導転移温度が増加することを見出した。これらはカイラル構造相転移の抑制により、その構造ゆらぎが超伝導特性に影響していることを示唆する。 (2) 量子スピン液体に類似した現象に関する研究を推進した。 ・Ce3Ir4Sn13は0.6ケルビンで極めて弱い反強磁気秩序を示すが、磁化率から見積もったワイス温度は-33ケルビンとなり、磁気相互作用は磁気秩序温度よりも遥かに大きい。磁気ダイナミクスの低温での特徴を調べるため非弾性中性子散乱をJ-PARC 物質・生命科学実験施設で実施し、相転移温度よりも高温で特徴的な磁気ゆらぎが生じていることを明らかにした。 ・さらにカイラル構造反強磁性体の候補物質を探索するため、Nd3Rh4Sn13の単結晶合成に成功し、結晶構造相転移と反強磁気秩序の出現をKEK放射光X線回折やJ-PARC 物質・生命科学実験施設での中性子回折により明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID-19の影響により、国内外での大型実験施設での量子ビーム散乱研究の機会が得られにくくなったものの、物質合成に注力することにより、カイラル構造の超伝導体の量子臨界現象を明らかにした。さらに、新たなカイラル構造を持つ磁性体の合成にも成功し、放射光X線散乱や中性子散乱を実施することができた。また、本科研費の支援により大学内本拠地での低温X線回折実験設備の整備も着手できたため、次年度以降の研究におけるCOVID-19の影響を抑えられる方策を取ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの混晶物質におけるカイラル構造量子臨界点の研究を継続し、より精密な量子臨界点の決定を行う。 量子スピン液体に関する研究では、磁気ゆらぎの観測が重要になってきたので、アメリカのオークリッジ国立研究所での中性子散乱実験を実施する。またA3T4Sn13, A = Nd, Eu, Gdの磁気秩序系を開拓する物質開発テーマを新たに追加設定する計画である。これらの物質群の一部は先行研究において報告されているものの、カイラル構造相転移の有無や磁気秩序状態が未解明になっている場合が多い。本拠地での低温X線回折、および可能な範囲での大型施設実験によってこれらの構造を解明し、本研究の当初計画に挙げたカイラル物質の開拓を推進する。本拠地での低温X線回折測定用X線源の更新に伴って、既設回折計との接合や冷凍機の稼働などを物質合成と並行して進める。放射光X線回折や中性子散乱に関して、それぞれKEKとJ-PARCへの課題申請を行う。また日本原子力研究開発機構の研究用原子炉JRR-3が再稼働しており、一部の中性子散乱装置の運営を担当しているので、本研究での活用を視野に入れた中性子散乱実験環境の再構築も進める。
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