2020 Fiscal Year Annual Research Report
ディラック半金属PdTe2における圧力誘起トポロジカル相転移と超伝導特性
Project/Area Number |
20H01851
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
大村 彩子 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (60425569)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
名嘉 節 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主席研究員 (30344089)
石川 文洋 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (50377181)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 超伝導物性 / 高圧物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、非自明な表面状態をもつタイプII型ディラック半金属PdTe2において5 GPa付近で理論予測された圧力誘起トポロジカル相転移(リフシッツ転移)と超伝導特性の関係を実験的に解明すること、さらに表面超伝導が磁場下で示す異常な振る舞いの起源を解明してPdTe2のトポロジカル超伝導の可能性を検証することである。初年度に得られた成果は下記の通りである。 1. 申請時点で超伝導転移温度(Tc)の圧力依存性が5 GPa付近で極大をもつことを見出しており,トポロジカル相転移との関係性が期待された。しかし,その後の二度の再測定ではTc極大の再現性は得られず,いずれも1 GPa以上の圧力域においてTc値は単調に減少した。再現性が得られた結果(1 GPa以上での単調減少)がPdTe2の本質的であると結論付け,少なくとも電気抵抗測定では相転移を示唆する変化は検出されないことがわかった。5 GPa付近の極大については,その発現圧力およびTc値から構成元素であるTeによる圧力誘起超伝導であると推測された。 2. 初年度は,2種の圧力媒体を用いて10 GPa以下の圧力域で静水圧下X線回折を実施し,低圧域での詳細な圧力変化を観測した。PdTe2の高圧下構造については特に低圧域の情報が不足していたため,本研究で得たデータは物性測定を考察する上で重要な結果となりうる。 3. 表面超伝導の評価に向けて,表面敏感な測定法と高圧発生技術を組み合わせた新規測定法の確立を目指しており,初年度は第一段階として,1)高圧セルの試料室周辺部の最適化と2)標準的な超伝導試料(常圧試料)を用いた計測系の構築を並行して進めた。その結果,1)では高圧力発生の点での構成部材の最適化はほぼ完了した。しかし,信号検出という点では,1)と2)どちらにおいても改善が必要であることが判明し,次年度以降の課題となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本課題研究では研究協力者である国外の研究グループとの共同研究が重要な位置を占めるが,2020年度は海外渡航が禁止されたために研究協力者のもとでの実験研究については取りやめとなった。また,国内においても代表者および分担者が所属する機関において一部行動制限があったため,特に2020年度前半は実験研究を計画通りに進めることは難しい状況にあった。2020年度後半からは,高圧力下での新規測定法の開発については着手することができ,常圧試料を用いた試験測定と高圧発生技術の最適化を進めることができた。しかし,本課題研究全体としては当初の予定よりも遅れており,それに伴い2020年度補助金の一部は繰り越すこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に引き続き,高圧下超伝導特性の多重極限下での探索・評価と新規測定技術の開発を並行して進める。なお,2年目は当該物質だけでなく関連物質も含めて,物性評価と構造解析を進める方針である: 1. 超伝導特性の解明に向けた測定法の確立:多重極限環境下(低温・高圧・磁場)で観測されたPdTe2の特異な表面超伝導をより詳細に調べるために,表面敏感な測定手法と高圧力発生技術とを組み合わせた新規測定法の確立を目指している。前述のように,高圧セル内の最適化は一定の成果は得られたため,2年目は課題である信号検出の点を改善するために,特に測定系の構築に重点を置いて計画を進める。また,分担者(学外)が開発を進める交流カロリメトリー法についても,初年度に分担者の所属機関において高圧実験の環境が整備されたため,2年めは高圧下での実測に向けた技術開発を継続する。 2. 結晶構造解析と電子状態の評価:初年度に得られた高圧下結晶構造のデータをもとに,超伝導への圧力効果について構造的な観点から考察を進める。また、研究協力者と共に構造データから電子状態を明らかにすることも試みる。 3. 2年め以降は,母物質のPdTe2に加えて元素置換した系についても,超伝導特性を調べ母物質に対する置換効果についても検証したいと考えている。
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Research Products
(2 results)