2021 Fiscal Year Annual Research Report
顕微イメージングを用いた非平衡ソフトマター不均一系の局所力学応答測定
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20H01873
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
木村 康之 九州大学, 理学研究院, 教授 (00225070)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 局所力学測定 / メソスコピック構造 / 非平衡ソフトマター / アクティブマター |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は顕微鏡観察で得られた時間差分画像の2次元フーリエスペクトルから、空間平均された中間時間相関関数を得る差分動的顕微鏡法(DDM)の開発を行った。単純流体として単分散のコロイド水溶液、および、粘弾性流体として、コロイド粒子を分散した高分子準希薄系(ポリエチレンオキシド水溶液)および界面活性剤系(塩化セチルピリジニウム+サリチル酸ナトリウム水溶液)に対して、昨年度新規に導入した大画素数・高速・高感度のCMOSカメラを用いて取得した画像にDDMを適用した。さらに、得られた中間相関関数からプローブ粒子の平均2乗変位を算出し、さらに拡張されたストークス・アインシュタインの関係式を用いて粘弾性スペクトルを得る一連の解析法の開発を行った。この際、明視野画像を用いる従来の明視野DDMに加えて、蛍光粒子を用いた蛍光DDMを行い、コロイド希薄分散系で両者が同等の情報を与えることを確認した。 上記の平衡状態でのソフトマター溶液のダイナミクス解析とは別に、電場により駆動された液晶電気対流の乱流状態(ソフトモード乱流)で観測される時空間パターンへも適用した。この際にはプローブ粒子を用いずに観察されるパターンにDDMを適用した。その結果、液晶乱流中での揺らぎの中間相関関数が短時間ではべき関数で、長時間では指数関数で与えられる2重緩和を示すことが分かった。これらの平衡流体、非平衡流体へDDMを適用した結果は、日本物理学会年次大会等で発表を行った。 次に、次年度で主に研究を行う非平衡分散系を実現するために、球状粒子の半面が金属、他面が誘電体からなる金属絶縁体ヤヌス粒子系の作成の準備を行った。まず、蒸着装置をはじめとする粒子作成用の設備の導入を行った。さらに、研究協力者である岩下靖孝氏(京産大)のもとに大学院生を派遣し、粒子作成法の導入および作成条件の探索を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画に従って動的差分顕微鏡法を用いたダイナミックス測定を高分子準希薄系などの平衡ソフトマター流体に適用し、その粘弾性スペクトル測定に成功した。また、新たに非平衡ソフトマター流体である液晶電気対流の乱流状態にも開発された方法を適用することで、その時空間ダイナミックスに関する情報を得ることに成功した。従来のDDMが粒子像の揺らぎに注目しているのに対し、パターンそのものの揺らぎ解析にも適用可能なことが確認された。一方で、COVID19のためにヤヌス粒子作成のための真空蒸着システムの導入に予想外の長時間を要したため、作成した粒子を用いた研究を本格的に開始することはできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により、明視野DDMによるパターン揺らぎと蛍光プローブ粒子を用いた蛍光DDMが可能であることが分かったため、両者の同時測定を行うことで、非平衡構造とその中での非平衡拡散に関して同じ測定法を用いて定量的な比較ができる可能性が生まれた。一方で、技術的問題として、中間相関関数を正確に評価するためには広帯域測定が必要であるが、取得データ量が膨大になる欠点がある。このため、複数のサンプリングレートでの動画撮影をおこない、これらをつないで広帯域の相関関数を得る方法の開発が必要であり、来年度も継続的に測定法の改善を行って行きたい。 またヤヌス粒子の作成法の最適化に関しては、引きつづき岩下氏と連携して研究を推進する予定である。
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Research Products
(7 results)