2022 Fiscal Year Annual Research Report
Collective motions of catalytic particles driven by chemical reations
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20H01878
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
山本 大吾 同志社大学, 理工学部, 准教授 (90631911)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩井 章久 同志社大学, 理工学部, 教授 (00154162)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アクティブマター / 有機燃料 / 触媒 / 集団運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、有機燃料の種類・濃度によって、界面が丸みを帯びたクラスターを形成したり、界面が角ばったクラスターを形成したりといった、多様な集団運動パターンが発現することがわかった。昨年度の結果を踏まえ、本年度は、この集団運動の形態を有機燃料置換や制限空間を利用して制御することを試みた。 有機燃料置換に関する研究では、溶質の拡散によって、Pt粒子を取り巻く媒質を置換できる実験系を構築した。例えば、純水をエタノール水溶液に置換した際のPt粒子の運動パターン変化を観察したところ、Pt粒子は初めブラウン運動をしているが、エタノール水溶液に置換することで、Pt粒子が次第に集合して滑らかな界面を持つクラスターが形成される。また、エタノール水溶液を2-プロパノール水溶液に置換すると、エタノール水溶液中では滑らかな界面を持ったクラスターを形成したが、2-プロパノール水溶液に置換後は角ばった界面を持ったクラスターへと形態が変化することを観察できた。 また、制限空間に関する検討では、幅100 μmサイズの溝を持ったマイクロチャネル近傍でPt粒子の集団運動を観察すると、Pt粒子が溝内に次第に集合して円環溝を覆い尽くすといった新規な集団運動パターンを見出した。 本研究で得られた知見を基に自走性物体の集団運動に関する研究が進展すれば、集団運動の形態や発現場所を自由にコントロールすることが可能となり、革新的な化学システムの創出に繋がると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実施計画をおおむね遂行できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる次年度は、実験的検討として、これまでの実験データを集約し、粒子の集団運動からより効率的に機械的エネルギーへと変換できるシステムのプロトタイプを構築する。概算となるが、「反応エネルギー⇒運動エネルギー⇒仕事」という各工程におけるエネルギー変換効率を計算し、本システムの有用性・将来性について検討を行う。 また、集団運動発現のメカニズム解明に向けた理論的検討を行う。実験的に見積もり可能な物性値を決定する。例えば、反応物質の反応速度解析を行い、反応速度定数を求める。 物性値を決定したら、実験で得られた集団運動挙動(例えば、「クラスター⇔解散の周期的な集団運動」や「トラベリングウェーブ」)を表現できるモデルを構築する。シミュレーション上では反応物質の反応拡散方程式と白金触媒粒子の運動方程式を連立して解く。白金触媒粒子の運動方程式では、反応物質の非対称環境における化学走性項およびブラウン拡散項を加える。このように物理化学的要素を考えたモデルを用いることで、集団運動発現のメカニズムの解明を試みる。集団運動が表現できない場合には、以上の因子以外の寄与が考えられる。例えば、高い非平衡条件下で起こる自己運動系では正のフィードバックあるいは自己触媒効果が系に備わっていることがしばしば重要となるが、本系では集団化が促進される効果を考える(例:触媒反応が起こると反応が促進される効果、近傍の粒子において運動方向が揃う効果、粒子が集団に引き込まれる効果など)。これらの効果に関しては、これまでの実験的検討を基に、どの寄与が大きいかを特定し、モデルに組み込む。
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