2020 Fiscal Year Annual Research Report
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20H01903
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鈴木 博 九州大学, 理学研究院, 教授 (90250977)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金谷 和至 筑波大学, 数理物質系, 特命教授 (80214443)
江尻 信司 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (10401176)
梅田 貴士 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (40451679)
北澤 正清 大阪大学, 理学研究科, 助教 (10452418)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 格子ゲージ理論 / 有限温度QCD / グラディエント・フロー |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究は、強い相互作用の基礎理論である量子色力学(QCD)の有限温度における各種物理量を、格子ゲージ理論により第一原理から数値計算しようとするものである。この計算は、初期宇宙の熱的進化や重イオン衝突のダイナミクス、またアキシオンダークマターの残存量などを研究する上での基礎的データを与える。この計算のためには有限温度での格子ゲージ場配位をモンテカルロ法により多数生成する必要がある。我々は、格子ゲージ理論における計算量を大幅に削減すると期待されるグラディエント・フローによる複合演算子の構成法(SFtX法)をエネルギー運動量テンソルなどに用いる。今年度は、まず、udクォークが現実より重い場合の格子間隔が0.07fmの場合の格子ゲージ場配位を用いて、174MeVから348MeVの温度範囲で状態方程式を計算した。ここでは、Harlanderらによって計算された2ループレベルのSFtX法係数を用いることで、系統誤差が小さい結果が得られた点が新しい。また、SFtX法の応用としてクエンチQCDの1次相転移温度直上での高温相と低温相間の潜熱が精度良く計算できることを示した。その一方で、物理点クォーク質量の2+1フレーバーQCDの有限温度における格子ゲージ場の配位生成を進めた。これは、PACS Collaborationで決定された格子パラメターを用い、3種類の格子間隔に対して有限温度での格子ゲージ場配位を生成するもので、今年度は北海道大学情報基盤センターのスーパーコンピュータGrand Chariotの50ノードを占有使用し、温度193MeV、格子間隔0.064fmおよび0.04fmに対して配位の生成を行った。これ以外にも、上記システムと九州大学情報基盤研究開発センターのスーパーコンピュータITOの共有使用により、温度193MeVおよび145MeV、格子間隔0.085fmの配位生成を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、物理点クォーク質量の2+1フレーバーQCDの有限温度における格子ゲージ場の配位生成を可能な範囲で精力的に行い、温度193MeVで、格子間隔0.085fmに対しては1732配位、0.064fmに対しては865配位、また0.04fmに対しては20個程度の配位を得た。格子間隔0.085fmと0.064fmに対してはこれらの配位数はおそらくほぼ十分なものと考えており、これらを用いて今後物理量の測定へと進むことができる。一方格子サイズが巨大な0.04fmのものはまだまだ配位数が少ないが、シミュレーションパラメターのチューニングは完了しており、今年度中に100個程度の配位取得が見込める。また、これら以外にも温度145MeVで格子間隔0.085fmに対しても570配位を得ている。これらのことから、今年度以降の有限温度物理量の測定および有限温度格子ゲージ場配位の出発点として、現在ほぼ満足のいく到達点にいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に引き続き、物理点クォーク質量の2+1フレーバーQCDの有限温度における格子ゲージ場の配位生成を行う。これは、PACS Collaborationで決定された格子パラメターを用い、3種類の格子間隔に対して有限温度での配位を生成するものである。昨年度は、当科研費によって北海道大学情報基盤センターのスーパーコンピュータGrand Chariotの52ノードを占有使用し、温度193MeV、格子間隔0.064fmおよび0.04fmでの格子ゲージ場配位を行った。今後は引き続き、同じシステムの52ノードの占有使用により、温度193MeV、格子間隔0.04fmでの格子ゲージ場の配位生成を続行する。昨年度はこれ以外にも、上記システム、また九州大学情報基盤研究開発センターのスーパーコンピュータITOの共有使用により、温度193MeVおよび145MeV、格子間隔0.085fmの格子ゲージ場の配位生成を行っており、今年度はこれらの配位を用いた有限温度QCDの物理量の計算(測定)に取り組む。具体的には、グラディエント・フロー法によって与えられるエネルギー運動量テンソルの有限温度期待値の決定を目指す。まず、上で述べたこれまでに生成された有限温度配位での期待値に関しては、今年度中の完了が可能であると考えている。一方、 フローさせたクォークの波動関数くりこみ因子の決定は、ゼロ温度での測定を必要とし、これは多大の計算量を要するが、Grand Chariotの占有使用を有効に活用することで、可能な限りの計算を進めたい。
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Research Products
(30 results)