2020 Fiscal Year Annual Research Report
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20H01911
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浅井 祥仁 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (60282505)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲田 聡明 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 特任助教 (20779269)
中山 和之 福岡大学, 理学部, 助教 (80602721)
笠原 健司 福岡大学, 理学部, 助教 (00706864)
中西 俊博 京都大学, 工学研究科, 講師 (30362461)
久門 尚史 京都大学, 工学研究科, 准教授 (80301240)
冨田 知志 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 准教授 (90360594)
澤田 桂 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, 研究員 (40462692)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ブラックホール / ホライゾン / ホーキング輻射 |
Outline of Annual Research Achievements |
ブラックホール時空の幾何学的性質を特殊な物性系の分散構造により再現し、そのホライゾンで生じるHawking輻射等の量子過程の研究が進んでいる。具体的には、これまで、87Rb BEC系のフォノンを用いた実験や誘電体中の光カー効果を用いた実験、および流体におけるdeep waveを用いた実験等が行われている。またスピン波マグノン系では天体ブラックホールよりも高いHawking温度の実現が可能である。そこで本研究ではこれら従来の系およびそれに該当しない新たな系に対し、ブラックホールの量子性に関する足がかりとなる知見を得ることを目的とする。 本年度では、従来よりも高いホーキング温度を持つ強磁性体-スピン波系を用いてBHの時空構造を実現しその量子的ふるまいを調べるために、測定系の構築およびテストサンプルの作製を行い、狭窄構造を変化させた際のスピン波応答を系統的に調査した。 また並行してGPUを用いた数値シミュレーションを進めており、3次元有限差分計算(FDM)の結果を日本物理学会に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度ではまず、厚さ50nmの強磁性体(パーマロイ)薄膜より成る導波路構造において、静磁表面スピン波(MSSW)の伝搬特性を調査した。具体的には、ストリップ幅を段階的に狭めた種々のサンプルを製作し、スピン波の強度及び周波数特性を測定した。その結果、BHの分散関係を再現するために必要となる数um以下の狭窄構造において、磁気異方性の効果が無視できないことを確認した。 またサンプル製作及び測定と並行して、狭窄構造に特定の閾値以上の電流密度を印加した際に発生する、superluminal Doppler効果及び特異分散構造を、GPUを用いた数値シミュレーションにより明らかにした。これによりhorizonにおけるスピン波変換の確認及びHawking温度の妥当性を評価した。 以上のように、コロナ禍ではあるものの、実測及び数値計算・シミュレーションの両面において概ね計画通りの進展が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度で進めたサンプルの製作及び数値シミュレーション結果をもとに、強磁性狭窄構造に電流を印加した際の分散構造の変化を定量的に調査する。またsuperluminal Dopper効果を発生させるためにはストリップ上で局所的に高い電流密度を実現する必要があり、CW印加による発熱が制約となる。そのため、パルス電流を用いたシングルショット測定なども検討しつつ進める。またスピン波以外の実験系における同様の調査は今後も継続して行う必要がある。
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