2020 Fiscal Year Annual Research Report
電子散乱による陽子半径測定に向けた陽子/炭素比オンライン測定器の開発
Project/Area Number |
20H01925
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
本多 佑記 東北大学, 電子光理学研究センター, 助教 (70807685)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 原子核物理 / 電子散乱 / 陽子半径 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は電磁スペクトロメータ―による陽子/炭素比オンライン測定器を作成できる見込みが立ったため、同構成の測定器を使用してその性能試験を行った。東北大学電子光理学研究センターの70MeV直線加速器を使用したテスト実験を行い、散乱された電子の運動量分解能は 5.6*10^-4 と目標とした 10^-3 を上回る十分な性能が得られた。その他の項目についても電磁スペクトロメータは設計通りの性能が得られることが分かった。 しかし、実験を行う環境には大量のバックグラウンドが存在することも判明した。実験で検出される信号に対してこのバックグラウンドの寄与が非常に大きく、オンラインモニターが十分な性能を発揮するためには、バックグラウンドを最低でも今の 1/100 に抑える必要がある。バックグラウンドは電子ビーム起源であり、ビームハローや標的との散乱で広がったビームがビームダクトと衝突することで発生し、標的に到達するのはガンマ線が大部分を占めていた。 上記のバックグラウンド対策として、二つの案を検討した。一つ目は放射線シールドの増強であり、現状の 50 mm 厚の鉛ブロックでのシールドを 100 mm 厚に変更し、さらに二層構造にすることで隙間を無くす。二つ目は散乱電子検出器の多層化であり、現状の2層から3層に増やす。ガンマ線は基本的に1層の検出器しか反応させないため、多層化することでガンマ線のバックグラウンドを解析上減らすことができる。これらの二案を実行するとバックグラウンドが 1/1000 になると予想される。 2021年度は上記の対策を施し、オンライン測定器を作成する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
陽子/炭素比オンライン測定器として実績のある電磁スペクトロメータ―を建造できる見込みが立ったために設計部分を大幅に簡略化することができた。しかし、想定を超えるバックグラウンドが見つかったため、その対応に時間が必要となった。それでも計画に遅れはなく、今年度に測定器の建造に平行して対策を行えば、計画通り2022年度から陽子半径測定実験を開始することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度前期は東北大学電子光理学研究センターの70MeV直線加速器を使用してバックグラウンド対策の効果確認を行う。その後、夏には陽子/炭素比オンライン測定器を建造する。2021年度後期には建造した測定器の試験、性能評価を行う。同構成の測定器で十分な性能が得られることが分かっているため、大きな問題は起こらないと思われる。そのため、2022年度からは本実験を開始できると考えられる。
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