2020 Fiscal Year Annual Research Report
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20H01928
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堂園 昌伯 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (60616259)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 対相関 / 対振動 / 対凝縮 / 核子対移行反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
自然界に存在する豊かな物質は、多様な「相」により生み出されており、その発現機構を探るのは物質科学の重要な目的の一つである。このような例のうち、原子核の核子対凝縮では、発現すれば現れるはずの2種類の素励起モードのうち、1つが実験的に確立していないという根本的な問題を抱えている。本研究の目的は、残る1つのモードである「対振動」の存在を確定することである。初年度である本年度は、本格的な実験に向けた以下の研究を行った。 (1) 反応プローブの決定 本研究目的のためには対振動モードを高効率で励起させる優れた反応プローブが必須である。このようなプローブとして(4He,6He)反応に着目した。歪曲波ボルン近似計算によりこの反応の反応機構を調べたところ、6He内の中性子対の弱束縛性が反応の際の運動学条件を向上させ、従来の(p,t)反応よりも対振動に対して高い感度を持つことが分かった(計算によると感度は一桁以上あがる)。この結果から、この反応を対振動に対する新たなプローブとして用いることに決定した。 (2) 実験の実施 (1)の結果を受け、東北大CYRICにて、120Sn標的に対して(4He,6He)反応を起こし、118Snの対振動モードを探索する実験を行った。データ解析の結果、励起エネルギー13MeV付近に従来の反応では見えなかったピークを観測することに成功した。ピーク位置は最新の理論計算で予測される高励起対振動モードの位置と一致しており、また反応の角度分布も理論計算とよく一致した。このことから、観測されたピークは対振動モードの有力な候補といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東北大CYRICにおける実験の結果から、(4He,6He)反応が対振動モードを探る有力なプローブであることを実証した。今後のより系統的な測定に向けた重要なステップであり、最終ゴールに対する見通しが立ったということで、区分は(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
東北大CYRICにて他のSn同位体に対しても同様の測定を行う。また、より運動学条件のよい前方角度での測定を実現させるために、阪大RCNPの高分解能スペクトロメータを用いた実験計画も検討していく。これにより(4He,6He)反応のデータを充実させ、反応機構や対振動モードに対する情報を増やしていく。
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Research Products
(2 results)