2020 Fiscal Year Annual Research Report
原始重力波の直接観測に向けた波形干渉を用いたレーザー干渉計の実験実証
Project/Area Number |
20H01938
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
和泉 究 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 国際トップヤングフェロー (20816657)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | レーザー干渉計 / 重力波 / 天文学 / 宇宙論 / 観測装置 / 精密計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、申請者が考案する「波形干渉を用いた新しいレーザー干渉計方式」を実験実証することで、これまで実現の目処がたっていなかった初期宇宙で発生したとされる原始重力波の直接観測の実現性を向上させることである。 研究実施計画に基づき,R2年度は(i)光学実験系の設計・組み上げおよび(ii)フェーズメータのアルゴリズム検討を実施した。 (i)新干渉計方式のユニークな優位性の1つは,事後データ処理によるレーザー周波数雑音の除去である。この除去能力を高い信号雑音比で確認するためには,実験系の設計段階において,複数の雑音要素の混入を低減しておくことが重要となる。主たる雑音として,2つのファブリ・ペロ共振器試験機(長さ50cm程度,フィネス10,000程度)の差動長さ変動が支配的であることを数値計算により確認した。これを受け,その低減設計として2つのファブリ・ペロ共振器を1つの低膨張金属スペーサを共有する設計を採用した。これにより,目標とする2桁の周波数雑音除去比を達成できる見通しを立てた。また,共振器の1つはすでに低膨張金属スペーサに実装され,波長1064nmのNd:YAG固体レーザーの光を共振させることに成功した。 (ii)フェーズメータは光ヘテロダイン信号からレーザー光の位相情報を取り出す装置で,新干渉計方式の骨子となる装置の1つである。本計画では,MHz帯のヘテロダイン信号を1Gsps程度の速度で直接デジタル信号としてサンプリングし,アナログ信号処理では実装が容易でない複雑な位相検出アルゴリズムの獲得とその装置の実装を目指す。R2年度は,MatlabやPythonを用いた数値計算を利用し,時系列でアルゴリズムの検証ができる環境を整備した。数値計算の妥当性検証として,デジタルPLLによる位相検出の実装とその機能確認を完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
進捗の点検・評価軸として,R2年度では次に示す3つのマイルストーンを設けた。(a)光学実験系の設計詳細化,(b)主たる光学実験系の調達,および(c)光学装置の組み上げの開始。いずれのマイルストーンも遅滞なく達成しており,提案研究は順調に進んでいると判断できる。 (a,b)光学実験系の設計詳細化を実施し,R2年度に必要な光学・機械・電子部品の選定を完了した。これを受けて,調達に比較的時間のかかるNd:YAG狭線幅固体レーザーを含む主たる光学実験部品の調達も予定どおり完了した。 (c)光学装置の組み上げを,予定通りR2年度の第4四半期より本格化し,光学定盤上にファブリ・ペロ共振器および光学部品の組み上げを開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き当初の研究計画に沿って研究を遂行していく。二年次にあたるR3年度は,光学実験系の組み上げを完遂し,光学実験を一通り実施できるような状態へと移行することを目指す。ここでのマイルストーンは,2つのファブリ・ペロ共振を同時に共振させた状態を維持しつつ,レーザー2光束の干渉による光ヘテロダイン信号の取得である。このマイルストーンを達成することで,三年次に実施する統合試験が遅滞なく実行できる目処が立つ。これと並行する形で,フェーズメータのアルゴリズム検討を実施するとともにフェーズメータに必要な装置の購入を完了させる見込みである。 コロナ禍においては,時に実験室に赴いて実験する行為が制限される可能性がある。実験室に赴くことが困難な状況下においては,上述のフェーズメータのアルゴリズム検討に注力するなど,状況に応じて詳細なスケジュールを柔軟に内部調整し,研究進捗への影響の最小化に努める。 最終年度にあたるR4年度には統合試験を実施,必要な計測データの取得に注力する予定である。
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