2020 Fiscal Year Annual Research Report
X線・多波長データ統合解析で探るブラックホール・ダウンサイジングの起源
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20H01946
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上田 佳宏 京都大学, 理学研究科, 准教授 (10290876)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ブラックホール |
Outline of Annual Research Achievements |
超大質量ブラックホールの成長メカニズムを理解する鍵となるのが、ブラックホールへのガスの供給源である「トーラス」と呼ばれる構造である。活動銀河核のトーラス構造を解明するため、前年度に完成させたクランピートーラスからのX線スペクトルモデル(XCLUMPY)を、近傍宇宙の隠された活動銀河核(2型AGN)10天体に適用した。その結果、X線から推定されるトーラスの立体角は、赤外線から推定される値より系統的に小さいことがわかった(Tanimoto, Ueda et al.)。 XCLUMPYモデルを、高空間分解能赤外線観測データの存在する計28の活動銀河核に当てはめた。このサンプルは、隠されていない活動銀河核(1型AGN)も含み、同種の研究が行なわれたサンプルとしては過去最大サイズである。1型AGNと2型AGNの両方について、X線と赤外線の結果を比較することで、トーラスの極方向にダストの多いアウトフロー成分が存在する示唆を得た。これらを元に、「活動銀河核統一モデル」を更新した(Ogawa, Ueda et al.)。 「すばる」XMM-Newton深サーベイ領域のX線探査で検出された赤方偏移 1.18-1.68にある活動銀河核について、Herschel 衛星による遠赤外線データを含めた多波長スペクトルエネルギー分布を整備した。それに対し、最新の銀河および活動銀河核の放射モデル(CIGALE)を当てはめ、星生成率と星質量を求めた。その結果、これらが星よりもブラックホール成長が支配的な種族であることをつきとめた(Setoguchi, Ueda et al.)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症による影響により、共同研究者と行う予定であった研究がやや遅れたものの、近傍活動銀河核サンプルに対する系統的なクランピートーラスモデルの適用、遠方活動銀河核の母銀河の性質の探査において、十分な成果を出すことができたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
まとまったサイズの近傍高光度赤外線銀河サンプルに対し、利用可能な全ての広域X線データを用いることで、活動銀河核の有無を判定する。それらにXCLUMPYモデルを適用することで、活動銀河核の構造を明らかにする。将来のXRISMによる観測に備えるため、明るい活動銀河核の分散型X線スペクトルを解析を進める。
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Research Products
(10 results)