2021 Fiscal Year Annual Research Report
X線・多波長データ統合解析で探るブラックホール・ダウンサイジングの起源
Project/Area Number |
20H01946
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上田 佳宏 京都大学, 理学研究科, 准教授 (10290876)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ブラックホール |
Outline of Annual Research Achievements |
超大質量ブラックホールの質量供給メカニズムを理解するためには、活動銀河核(AGN)トーラスの位置(ブラックホールからの距離)を知ることが重要である。X線は、ガスとダストを含んだ全物質を追跡できるという特徴がある。我々は、XCLUMPYモデルを改修し、クランピートーラス中のケプラー運動を考慮して、蛍光輝線のプロファイルを予言した。これを、Chandra衛星搭載HETG装置で得られた Circinus Galaxyの深いデータに適用することで、トーラス内縁半径をこれまでで最も正確に求めた。その結果、ダストの豊富なトーラスのより内側に、ダストのないガスが大量に存在することがわかった(Uematsu, Ueda et al.)。 銀河合体は、超大質量ブラックホール成長の重要なパスの一つである。我々は、銀河合体により爆発的な星形成を起こしている超/高光度赤外線銀河(U/LIRG)に着目した。近傍宇宙にあるU/LIRG 57天体からなるサンプルの広域X線スペクトルを解析することで、系統的にそれらの中心核構造を調査した。その結果、銀河合体の段階が進むにつれ、(1) 中心核の吸収量が増加し「コンプトン厚AGN」の割合が増えること、(2) AGNからのX線光度がボロメトリック光度に対して弱くなること、(3) 強力なアウトフローが見られること、を発見した。また、星形成率とブラックホール成長率を比較することで、確かに銀河合体に伴って銀河とブラックホールが共進化している証拠を得た(Yamada, Ueda et al.)。 AGNトーラスの物理的起源を検証するため、有力な理論モデルの一つである「放射駆動型噴水モデル」に着目し、それが予言するX線スペクトルを計算した。これを 狭輝線セイファート1型銀河 NGC 4051のデータと直接、比較したところ、観測されたWarm Absorberからの特徴の一部がよく再現できることがわかった(Ogawa, Ueda et al.)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ブラックホール周囲のケプラー運動を考慮したトーラスモデルの開発および実データへの適用、近傍の高光度赤外線銀河サンプルの広域X線スペクトルの系統的解析、AGNトーラスの理論モデルと観測データの直接比較など、広いテーマで重要な成果を出すことができたといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
最新のeROSITA衛星によるX線探査データを用いて、遠方宇宙の活動銀河の多波長スペクトルを解析し、母銀河の性質を探査する。近傍の高光度赤外線銀河サンプルの多波長スペクトルおよび面分光データを解析し、AGNの母銀河への影響を合体段階ごとに調査する。
|
Research Products
(13 results)