2021 Fiscal Year Annual Research Report
A new scenario of dust growth in protoplanetary disks explored through large-scale direct numerical simulations of turbulence
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20H01948
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
石原 卓 岡山大学, 環境生命科学学域, 教授 (10262495)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥住 聡 東京工業大学, 理学院, 准教授 (60704533)
梅村 雅之 筑波大学, 計算科学研究センター, 教授 (70183754)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ダスト成長 / 乱流 / 大規模直接数値計算 / 原始惑星系円盤 / 微惑星形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
原始惑星系円盤のダスト成長の新シナリオ構築のため乱流の大規模直接数値計算を活用した研究を進めている。本年度は慣性の大きさの異なるダスト粒子の乱流中の運動について、弱圧縮性乱流の高精度高解像度差分法に基づく直接数値計算(DNS)で得られたデータの解析を行なった。その結果を非圧縮性乱流のフーリエスペクトル法に基づくDNSの結果と比較することで、圧縮性乱流場では非圧縮性乱流場とは異なり、速度の圧縮成分の存在に起因する密度や圧力の変動が観察されるが、圧縮性の弱い(マッハ数0.3以下の)乱流中のダストの運動は本質的には速度のソレノイダル成分に支配されていることを明らかにした。そして、同様な結果が等温を仮定した圧縮性乱流のDNSにおいても得られることを確認した。これにより原始惑星系円盤中のダスト成長を考える際の乱流は理論的には非圧縮として扱って特に問題ないことを実証した。また、高レイノルズ数乱流場の特徴として、小スケールにおける速度変動が著しく非一様であり、局所的な慣性力と粘性力の比として定義される局所レイノルズ数も非一様となることが知られていたが、非圧縮性乱流の大規模DNSデータを用いた新たな解析により、テイラー長に基づくレイノルズ数が1100と高い乱流場においても、局所レイノルズ数は揺らぎが大きいものの平均は70程度と小さいこと、および、局所的な渦度の大きさに依存しないことを明らかにした。さらに、高レイノルズ数乱流中においては平均的なエンストロフィーの値が高いアクティブな領域と低い非アクティブな領域が存在することが知られているが、乱流DNSを用いた粒子追跡シミュレーションのデータの解析により、乱流中の粒子の相対拡散の仕方が初期粒子位置に依存して、古典的なリチャードソンの法則に従わない場合があることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では原始惑星系円盤乱流におけるダスト成長のシナリオを2つの可能性を考えている。一つは高レイノルズ数乱流中の階層的な渦構造とその中で衝突・付着 成長するダストの運動の特徴により、衝突破壊問題が回避できる可能性があるというシナリオであり、もう一つは高レイノルズ数乱流中で運動するダストが乱流 中で重力不安定を起こしうる程度に高濃度に集中する可能性があるというシナリオである。これらのシナリオを検証するためには、大規模な乱流の直接数値計算 で十分に多数の慣性粒子を追跡する数値実験を行う必要がある。従来のコードでは、同時に追跡できる粒子の個数が512の3乗個の8セットに限られていたが、コードの改良 (8バイト整数型の使用、ソートプログラムの改良)および最適化(追跡する粒子数に応じた最適並列数の選択)により、4096の3乗の格子点数の乱流場で2048の3乗個の8セット以上の粒子追跡を可能にした。これまでに実施したデータ解析では、高レイノルズ数乱流によってダスト粒子が著しく集中する可能性が著しく高まることの確認はまだできていないが、粒子濃度の累積確率密度関数の解析により最も高濃度になる粒子の慣性の大きさが考える領域のサイズに依存すること、そして、その結果が動径分布関数の解析結果と無矛盾であることが確認できた。また、慣性の大きい粒子の多くが限界付着速度以下で低速衝突しやすいのは平均エントロフィーが低い非アクティブな領域であることを示唆する結果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
原始惑星系円盤乱流におけるダスト成長の2つのシナリオを検証・考察するため、乱流の大規模直接数値計算で十分に多数のダスト粒子を追跡する数値実験を富岳を用いて引き続き行い、高レイノルズ数乱流中の慣性粒子の振る舞い(衝突付着成長過程)を明らかにすることを目的としたデータベースを構築する。そして、構築する粒子の運動のデータベースの解析を進め、高レイノルズ数乱流中の階層的な渦構造の中のどのような場所で低速衝突付着がどのような頻度で起きうるのかを定量的に明らかにする。また、高レイノルズ数乱流中の粒子の衝突付着成長シミュレーションを実施し、平均衝突速度が限界付着速度を上回るような状況下での粒子の衝突付着成長についての知見を得る。一方、高レイノルズ数乱流中の粒子濃度について得られている結果を用いて、重力不安定が起きうる可能性について議論と検討を進める。
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Research Products
(15 results)