2020 Fiscal Year Annual Research Report
新氷床コアレーザー溶融法で探る巨大太陽プロトン現象の超高時間分解能検証
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20H01952
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
望月 優子 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 室長 (90332246)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 和也 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 特別嘱託研究員 (70221356)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 太陽活動 / 太陽プロトンイベント / 氷床コア / 超高時間分解能 |
Outline of Annual Research Achievements |
理化学研究所で新規に開発した自動氷床コアレーザー溶融装置によって、南極大陸の日本のドームふじ基地およびその近傍で掘削された氷床コアについては、これまでの約1年の時間分解能では識別できなかった巨大太陽プロトン現象を識別し得るだけの超高時間分解能(1ヶ月オーダーのタイムスケール)が達成できるようになった。この氷床コアレーザー溶融装置と本課題予算で導入した高感度イオンクロマトグラフィー装置を組み合わせた、ドームふじ氷床コア中の硝酸イオン濃度をプロキシ(代替指標)とした歴史上の巨大太陽プロトン現象の痕跡の検証が本研究の目的である。 2020年度の計画は、適切なイオンクロマトグラフィー装置の機種を選定し、競争入札を経て当研究所に導入のうえ、上述の新氷床コアレーザー溶融装置を運用しつつ、導入された新装置で試験分析を行うことであった。予定どおり、氷床コア中の超微量イオン分析に適切と考えられた海外製と日本製の2社の分析装置について、実際の氷床コアの残存サンプルを用いたテスト分析を行った。それらの分析データ、精度、分析に必要な試料の容量、作業簡便性などを比較・検討した結果、陰イオンクロマトグラフィーICS-6000(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を導入することに決定した。 コロナ禍の影響があり実験研究が4ヶ月ほどストップしたため、多少遅れたが、競争入札の結果、予定どおり同イオンクロマトグラィー装置を導入した。さらに南極ドームふじ浅層コアの一部を保管元の国立極地研究所から理化学研究所に移送し、上述の氷床コアレーザー溶融装置を用いてドームふじ氷床コアとしては初めてこれまでの約1/10の分解能となる、深度方向3mmの超高空間分解能での自動サンプリングに成功した。この採水試料について、本課題で導入したイオン分析装置による測定を行い、論文用データの取得および立ち上げ運用を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は将来的な分析の効率化を視野に入れた、複数の最新のイオンクロマトグラフィー分析装置の機種の吟味と導入が主な目標であった。研究実績の概要で述べたように、コロナ禍の影響があり実験研究が4ヶ月ほどストップしたため、多少遅れたが、目標は順調に達成された。
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Strategy for Future Research Activity |
上述した理化学研究所で新規に開発した自動氷床コアレーザー溶融装置によって達成可能な最小の空間分解能は、レーザー強度などの装置のパラメタにも依るが、本質的に氷床コアの密度に依るところが大きい。2020年度に当該のレーザー溶融装置を初めてドームふじ氷床コアのサンプリングへ応用した結果、密度が比較的高め(深度が比較的深め)の浅層コア試料について、最小の空間分解能が2.5mm程度から3mm(3mmで完全分離されたサンプリング)となることがわかった。本課題で予定する巨大太陽プロトン現象の痕跡が想定されるコア深度は、このテスト実験のコア深度より浅いため、分解能は応募時に計画した約2mmから3mm程度に低くなるであろうことが判明した。 代表者らが応募時に検証の第一候補に挙げた「キャリントン・イベント」と呼ばれる1859年に起きた巨大太陽プロトン現象は、論争のある先行研究(McCracken et al. 2001)によると、グリーンランド氷床コア中の硝酸イオン濃度が約1ヶ月のタイムスケールでスパイク状にピークに達し同スケールで落ちる。時間分解能は2-3週間で突発ピークは数個のデータ点から成る。ドームふじコアの分解能3mmは約1ヶ月に相当するため、先行研究と同様な3週間以下の分解能での検証は難しくなり、報告されたピーク濃度等の情報も考慮すると、濃度の増大が見られたとしても突発的なスパイクと確実に結論づけるのは難しくなったと考えられる。従って、応募時の計画調書でキャリントンイベントの検出が難しい場合の第二の候補として掲げていた、超巨大太陽プロトン現象と考えられている西暦774年の宇宙線イベント(ドームふじ氷床コア中の宇宙線生成核種10Beによる同定について、Miyake, Horiuchi, Motizuki, Takahashi et al., 2015)を本研究の研究対象として設定する。
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[Presentation] A novel high-resolution laser-melting sampler for discrete analyses of ion concentrations and stable water isotopic compositions in firn and ice cores2021
Author(s)
Y. Motizuki, Y. Nakai, K. Takahashi, J. Hirose, Y. V. Sahoo, Y. Yano, M. Yumoto, M. Maruyama, M. Sakashita, K. Kase, S. Wada, H. Motoyama
Organizer
virtual EGU General Assembly 2021 (vEGU21)
Int'l Joint Research
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