2020 Fiscal Year Annual Research Report
Ultra Site for Measuring Atmosphere of Tokyo Metropolitan Environment and Collaboration Studies with High-Resolution Atmospheric Models
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20H01967
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 正樹 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (00255142)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 創 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (10333783)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 数値モデル / 関東圏ウルトラサイト / 二重偏波ドップラー気象レーダー / 雲レーダー / 全球非静力学モデルNICAM / 雲物理スキーム / ラージエディシミュレーション / 衛星シミュレータ― |
Outline of Annual Research Achievements |
関東圏ウルトラサイトによる観測範囲の領域を対象に、高解像度数値計算を実施し、観測データの包括的な利用を通じて数値モデルの検証・改良を行った。関東圏ウルトラサイトにおける観測として、気象庁二重偏波ドップラー気象レーダー、情報通信研究機構(小金井市)に設置した雲レーダー、防災科研Kaレーダー等の観測データの整備・利用を進めた。2019-2020年に発生した台風や対流雲や前線性の雲降水システム等の事例を抽出し、これらの観測データを解析し、雲降水システムの時間発展的な詳細構造の解析を行い、雲降水特性を明らかにするととも、数値モデル検証用に整備した。 領域スケール実験から全球実験までを同一のモデルで計算可能な全球非静力学モデルNICAMを利用するとともに、理化学研究所領域モデルSCALEや気象庁現業局地モデルasucaを利用し、関東圏を対象とした高解像度計算(数km格子間隔以下の雲解像計算等)を実施した。観測データによりNICAM領域実験の結果を比較検証し、雲物理スキームや乱流スキームの検証を進めた。さらなる高解像度化のインパクトを調べるために、NICAMをラージエディシミュレーションモデル(LES)として用いるための技術の開発を進めた。 人工衛星観測による数値モデル検証のために開発した「衛星シミュレータ―」による解析手法を用いて、観測データと数値シミュレーション結果との雲降水プロセスについて比較を行った。「衛星シミュレータ―」に偏波レーダーシミュレータ― POLARRISを導入して、地上リモートセンシング観測に適用する改良を行い、これを用いて雲物理過程に焦点をあてた解析を行い、観測との比較を通じて数値モデルの検証を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、関東圏における顕著気象現象である台風や前線等のシビアストーム事例を少数例選定し、これらの事例を対象にした二重偏波ドップラー気象レーダーの解析、数値モデルによる予測実験を実施し、一連の解析手法を確立した。 シビアストーム事例として、2019年9月9日に関東に接近した台風15号、2020年4月18日の温帯低気圧に伴う前線性の降水が関東に接近した事例等を選定した。これらの事例における気象庁二重偏波ドップラー気象レーダーとして、成田空港ドップラーレーダー・羽田空港ドップラーレーダー・東京レーダー(柏市)を対象とし、レーダー反射因子、偏波パラメータ、ドップラー速度等を解析し、雲タイプ判別モデルを適用し、これらの事例における降水の特徴の比較を行った。また、情報通信研究機構(小金井市)に設置した雲レーダー、防災科研Kaレーダー等の観測データの整備利用を進めた。 気象庁次世代非静力学モデルasucaを東京大学情報基盤センタースーパーコンピュータに移植し、東京大学大気海洋研究所において開発した全球非静力学モデルNICAM、理化学研究所局地モデルSCALEの3者の数値モデルにより、観測で捉えたシビアストームの数値予測実験を行った。水平解像度は、気象庁で局地予測に利用している約2km、およびさらなる高解像度約1kmとした。 「衛星シミュレータ―」に偏波レーダーシミュレータ― POLARRISを導入して、雲物理過程に焦点をあてた解析を行い、観測との比較を通じて数値モデルの検証を行った。3種類の数値モデルによる数値シミュレーションの結果の降水、雲物理量を比較するとともに、観測シミュレータを適用し、数値シミュレーションにおける降水粒子の特徴をとらえた。これらの数値モデルの結果と観測結果を比較し、数値モデルと観測結果の類似点、相違点を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、関東圏ウルトラサイトによるの領域を対象に、高解像度数値計算を実施し、観測データの包括的な利用を通じて引き続き数値モデルの検証・改良を行う。関東圏ウルトラサイトにおける観測として、気象庁二重偏波ドップラー気象レーダー、情報通信研究機構(小金井市)に設置した雲レーダー等の整備・利用を進め、関東圏の現業・研究用のリモートセンシング観測機器のデータも含めた包括的な利用を検討する。また大気海洋研究所屋上に雨粒子計測用のディスドロメータLPMを設置し、自動気象観測装置と連携して、東京レーダー(柏市・気象庁)等との比較観測を行う。2020-2021年に発生した対流雲や前線性の雲降水システム等の事例を多数、抽出し、これらの観測データを整備・解析するとともに、同事例を対象とした数値モデルNICAM、asucaによる数値シミュレーションを行う。 数100mメッシュ間隔での数値モデル実験を実施し、ラージエディシミュレーションモデル(LES)として用いるための技術の開発を進める。観測データと数値モデル実験の比較により、雲物理過程、境界層乱流過程の検証を行う。偏波レーダシミュレータPOLARRISを導入した「衛星シミュレータ―」による検証を進める。 観測データとの比較から数値モデルの特に雲降水スキームの改良を行う、この結果を全球版NICAMによる実験を実施することで、全球域の雲特性の寄与を調べることが可能になる。数値モデルに用いる雲物理スキームは、複数の複雑性の異なる雲物理スキームを対象とし、1モーメント・2モーメントバルクスキームを用いる。また、精緻なビンスキームの利用が可能となる開発を進める。
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Research Products
(9 results)