2021 Fiscal Year Annual Research Report
高温高圧下中性子実験による惑星内部の超イオン伝導状態の解明
Project/Area Number |
20H01998
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
佐野 亜沙美 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 研究主幹 (30547104)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 義生 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 准教授 (20452683)
大平 格 学習院大学, 理学部, 助教 (90873159)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 高圧 / 中性子回折 / 氷 / 超イオン伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
水素を直接”見る“中性子回折実験は、天体の重要な構成要素である水素の極限状態における振る舞いを直接明らかにするためのツールとして威力を発揮する。これまでは、技術的な制約からその実験圧力温度は10万気圧、1400度程度までに限られていた。しかし、氷天体内部には超イオン伝導状態など、水素が重要な役割を果たす現象があり、より高圧側に実験条件を広げる必要がある。本研究では、一対のダイアモンドアンビルをパリーエジンバラセルの中に配して荷重を印加する、高圧中性子実験用の2段式加圧セルを開発するものである。このセルは、もともと放射光実験用に開発されたものであるが、大容量の試料容積、そして安定加熱・均質な温度勾配という観点から中性子実験にも適している。令和3年度は、令和2年度に延期となっていた放射光実験を実施し、中性子実験用にデザインを変更した種々のセルについて圧力発生試験を行った。その結果、最高で34万気圧の圧力発生を確認できた。また、開発したセルをJ-PARC MLFのビームラインに持ち込み、中性子回折実験を行った。中性子ビームの入射方向やバックグラウンド対策の検討を行うことで、微小試料から質の良いデータを取得するための道筋が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は、令和2年度に延期となっていた放射光実験をPhoton Factoryで実施した。実験では、ARNE7に設置されたMAX-IIIのサイドブロックを外し、上下アンビルのみを用いて、パリ-エジンバラプレス(PE)用アンビルと、その間に挟んだセラミックスセルを加圧した。荷重を印加しながら、数トンおきに試料の回折パターンを取得して格子体積を求め、状態方程式から発生圧力を算出した。異なる素材のセルについて比較を行い、最高で34万気圧の発生を確認した。一方で、どのセルについても高荷重で圧発生が悪くなる傾向がみられたため、ダイアモンド周辺の素材を変更するなどして今後最適化していく予定である。 さらに、セルをJ-PARC MLFの超高圧回折装置PLANETに持ち込み、中性子回折データの取得を行った。中性子の加圧軸に平行な方向と、垂直な方向から中性子を入射する方法についてデータを比較し、バックグラウンド及び試料からの信号強度の観点から、最適なセッティングを探った。その結果、非常に小さい試料からでも解析に耐えうる質のデータを取得できることが確認された。これらのことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度も引き続き、放射光実験による圧力発生、高温発生試験を行い、セルの最適化を進める。また、J-PARC MLF内超高圧回折装置PLANETにおいて中性子回折実験を実施し、高温高圧下にある氷中の酸素・水素位置を直接観測し、氷天体内部において超イオン伝導状態が存在する条件を詳細に決定する。
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