2020 Fiscal Year Annual Research Report
Effect of deviator stress on polycrestal anelasticity at near solidus temperatures and seismological observability of very small amount of melt
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20H02004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
武井 康子 東京大学, 地震研究所, 教授 (30323653)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 部分溶融岩 / 変形 / 非弾性 / 強制振動実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、部分溶融岩の非弾性特性に対する差応力の影響を実験的に解明することを目指している。このため、差応力のない状態での部分溶融体の非弾性特性については十分に解明されている必要がある。今年度は、まず差応力のない条件下での部分溶融体の非弾性特性について、本研究に用いる実験試料での既存の実験データを論文にまとめる作業を行った。この作業は概ね順調に進展し、論文の完成までもう少しという状況である。
実験に向けて、試料の準備を行った。本実験に使用する岩石アナログ物質(ボルネオール+ジフェニルアミン系)については、ボルネオール試料に含まれる微少量の不純物によって粒界構造が大きな影響を受けることがあり、実験の再現性を高めるためには再結晶法による高純度化が有効であることがこれまでの本研究代表者による研究によってわかっていた。しかし、高純度化したボルネオールを用いて部分溶融試料を作成したところ、異常粒成長が発生し、バイモーダルの粒径分布を持つ極めて不均質な試料になる事がわかった。このような不均質な試料は本研究目的には適さないため、異常粒成長の発生は深刻な問題であると認識し、これを解決するため、ボルネオール+ジフェニルアミン系の内部構造制御の問題に取り組むこととなった。その結果、再結晶法を複数回繰り返した高純度のボルネオールを用いることで、異常粒成長がさらに促進され、異常粒のみで埋め尽くされた等粒状均質試料を作成できることがわかった。ボルネオールの純度と、プレアニーリングの温度と時間を調整することで、本実験に適した試料を安定的に作成できるようになった事は今年度の大きな成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
粒界構造が重要な役割を果たす力学物性実験では、一般に粒界構造に大きな影響を与え得る微量不純物の制御が重要な課題となる。本研究に用いる実験試料では、高純度のボルネオールを用いる事で試料の粒界構造を制御できる事がわかっていた。しかし、実際に試料を準備する過程で、高純度のボルネオールが異常粒成長を促進し、試料の内部構造が極めて不均質になってしまうという、当初は予想していなかった深刻な問題に気づいた。このため、本年度はこの問題にも取り組むこととなった。製薬会社の協力を得て様々な精錬方法を試すことができ、最終的には本実験に適した試料の作成法を確立することができた。当初は予想していなかった問題の発生により、変形実験に用いる装置の準備には遅れが生じているため、「やや遅れたている」との自己評価になった。しかし、粒界構造の制御された極めて再現性の高い実験手法を実際に確立できたことは、今後様々な研究を可能にする大きな成果であり、論文として公表する価値があるため、現在この内容を含む論文を執筆中である。この点を考えると、本研究を進める中で予想外の大きな成果を得たとも言える。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、試料の変形実験を行うための3軸セルの改良を行い、実験装置の準備を進める。また、変形実験の条件(差応力、封圧、メルト分率、など)を設定するために、多結晶体の内部構造変化に関係する既存の理論を整理する必要があり、現在、有効封圧理論やクラック成長理論などを整理している段階である。これらの準備に基づき、部分溶融体の変形実験へと進む計画である。
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Research Products
(1 results)