2020 Fiscal Year Annual Research Report
Study of Martian core structure based on density and sound velocity measurements
Project/Area Number |
20H02008
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
寺崎 英紀 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (50374898)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米田 明 大阪大学, 理学研究科, 招へい研究員 (10262841)
鎌田 誠司 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), その他 (30611793)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 中心核 / 鉄合金 / 密度 / 弾性波速度 / 高圧 / 火星 |
Outline of Annual Research Achievements |
惑星中心核を構成するFe-Ni合金液体・固体の密度および弾性特性は、惑星の内部構造を理解するために必要不可欠な情報である。本研究では、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)を用いた密度と弾性波速度の複合測定により火星中心核条件での鉄合金融体の状態方程式決定を目的とする。 密度測定には、試料のX線透過率測定から密度を導出するX線吸収法を用いた。X線吸収法は、試料結晶状態に依存せず密度を測定可能で液体試料には有効である。2020年度は、まずX線吸収法とDACを用いてFe, Ni固体試料の室温下での測定を行い、測定精度評価と光学系・検出器セットアップの最適化を行った。Fe密度については、25 GPaまでの圧力まで密度をX線吸収法で測定し、X線回折測定から求めた密度と比較して最大3%の差で一致した。この結果については原著論文としてまとめ投稿中である。 次にレーザーを用いた高温条件での測定では、Fe, Ni固体試料について測定し、X線吸収法及びX線回折法による2つの手法からの密度を比較した。レーザー加熱はX線測定光路との干渉を避けるためファイバーレーザーをDACに斜入射することで行った。この結果、Feは40 GPa, 2200 K, Niは20 GPa, 1750 Kまでの圧力・温度条件で測定することができた。Fe, Ni試料共に温度変化に伴う明瞭なX線透過率変化を確認した。 弾性波速度測定には、GHz超音波パルス干渉法(GHz超音波法)をDACに適用した。2020年度は、超音波発生の圧電素子および測定装置セットアップを3 GHz対応までアップグレードさせ、より高圧条件に対応させた。弾性波速度測定は、Fe試料について15 GPaまで測定した。試料厚み測定や試料状態確認にラボのX線イメージングやX線回折を用い、これらによる測定精度の評価も実施し、20 GPaまでの圧力条件での測定に目途がついた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
密度測定について、2020年度はまずFe, Ni試料の300 Kでの密度をX線透過率測定から求め、X線回折からの密度と比較し、測定精度の評価を行った。Fe密度は25 GPaまでの条件で回折密度と最大3%の差で一致した。次に高温条件での密度測定では、レーザー加熱を用いFeとNiのX線透過率測定を実施した。X線用検出器との光路の干渉を避けるためファイバーレーザー斜入射を採用した。Feは40 GPa, 2200 K, Niは20 GPa, 1750 Kまでの圧力・温度条件で測定することができ、温度変化に伴う明瞭なX線透過率変化を確認した。また測定系セットアップ最適化を行い、コリメータ直後に検出器を設置し入射X線強度の分散を0.5%未満に抑えた。 コロナ禍の影響で2020年下半期のみの放射光ビームタイムとなったが、ラボにおいては本科研費で高倍率対応のシステム実体顕微鏡を購入し、これによりDACへのサンプリング精度が向上した。また一気圧の密度測定用高温炉の移設・立ち上げを行い、これまでのFe密度の結果をまとめ発表した(Kamiya, Terasaki et al. 2021)。また分担者(鎌田)が立ち上げた紫外レーザー加工機を用い金属材への高精度加工が可能となった。 GHz超音波法を用いた測定では、本科研費で3GHz対応信号発生器を購入し、岡山大学惑星研に設置した。分担者(米田)は、惑星研のスパッタ装置による超音波発生用ZnO圧電膜の成膜条件を調整することで、GHz超音波法における搬送周波数を3GHzまで向上させることに成功した。コロナ禍の影響により惑星研滞在が制限されたため、大阪大学で15 GPaまでのFe試料の弾性波速度の予備的測定を行った。イメージング用及び回折実験用のX線の有用性を確認し、本番測定への目途をつけた。またデータ解析でもバックグランドノイズ除去法などの進展があった。
|
Strategy for Future Research Activity |
X線吸収法による密度測定では、2021年度上半期の放射光ビームタイムは確保しており、2020年度に実施したレーザー斜入射と最適化した検出器セットアップを用いて、引き続きFe, Niの密度を測定する。測定条件は2500 K, 50 GPaまでに拡張して、金属密度の圧力・温度依存性を求め、状態方程式を決定する。圧力・温度拡張については、2020年度のセットアップを用いることで問題なく実施できる。さらにX線回折密度と比較し、レーザー加熱下でのX線吸収法による測定精度・誤差の評価を行う。上記の測定により、本課題で目標とする液体鉄合金試料の火星中心核条件(20-40 GPa, 2000-3000 K)での密度測定を確立することができる。 またFe, Niの状態方程式の決定においては、高圧下の密度と共に常圧での密度と熱膨張率も必要となる。これについては高温炉(岡山大学設置)を用いて、2100 KまでのNi固体・液体の密度と熱膨張率を測定する。Fe固体・液体の密度は高温炉を用いて我々が最近報告した測定データを用いる。 GHz超音波法では、2020年度実施した予備実験の知見を生かしFe試料の本番測定を行う。現時点で予定している主な改良点は、①Fe試料から下側DACへの音波エネルギー漏洩を抑制するためにダイヤ先端にSiO2スパッタ膜を成膜する、②Fe試料の厚さを確保するためにB-BNコンポジットガスケットを使用する、などである。試料長測定については、有限要素法によるダイヤモンドアンビルの弾性変形解析を実施し、DACにおける発生圧力と荷重から弾性変形量を見積もる手法を確立する。荷重についてはサラバネの変形量から見積もる方法を開発済みである。以上の要素技術を組み合わせて2021年度中に20 GPaまでのFe試料の弾性波速度測定の完了および外熱式加熱による高温下での測定開始を目指す。
|
Research Products
(17 results)